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豊田通商がもっとアフリカへ、コロナ禍でもトヨタの大型SUVに大きな需要

製販・整備体制を拡充
豊田通商がもっとアフリカへ、コロナ禍でもトヨタの大型SUVに大きな需要

アフリカを走るランドクルーザー

アフリカでトヨタ自動車の販売業務を担う豊田通商。アフリカ全土をカバーする事業ネットワークと人員を生かし、車の生産や販売、サービスといった多岐にわたる施策を展開する。新型コロナウイルスの感染拡大でアフリカ新車市場は落ち込んだが、中長期的な拡大を見据える。「ウィズ・アフリカ フォー・アフリカ」の理念でアフリカの成長とともに事業成長を加速する。(名古屋・山岸渉)

「アフリカの中期的な成長や長期的な潜在能力を含めて活動を止めずに布石を打つ」。豊田通商の大塚慎一郎アフリカ本部トヨタアフリカ自動車部部長は力を込める。同社は車やヘルスケアなどアフリカ全土をカバーする事業ネットワークと人員が強みで、2019年1月にトヨタからアフリカでの営業業務を全面移管された。

コロナ禍で主要市場の南アフリカが落ち込むなど20年のトヨタ車の販売は19年実績から減少したが、伸びた車種もある。ほとんどを日本から輸出するスポーツ多目的車(SUV)「ランドクルーザー70」は販売台数が約2万2000台で、前年実績を上回った。需要をけん引したのは、コロナ禍での人道支援で行われた物資の輸送や救急活動向け車両だ。

ランドクルーザーは険しい道に対応する走破性や耐久性が評価されている。国連機関による難民キャンプ向けの物資の輸送などで多く使われており、同社では堅調に販売が推移するとみる。トヨタ車はランドクルーザーなどの大型車でBツーB(企業間)やBツーG(対行政)向けにシェアが高く、アフリカでは強みの領域。きめ細かい対応などで今後も顧客獲得に努める。一方、シェア拡大が課題の小型車ではスズキからOEM(相手先ブランド)供給を受け商品群を強化する。

生産や販売、整備など全方位の施策を展開する。ガーナで21年半ばに車両組立工場の稼働を予定するなど現地生産を推進。販売ではオンライン商談などニーズに合わせ積極化する。認定中古車の販売も強化し、25年にはアフリカ全土への展開を目指す。一定の技能がある車修理ガレージの認定も実施。認定修理ガレージがある国は13カ国にまで広げており順次拡大する計画だ。

ケニアでは現地スタートアップのデータ・インテグレイテッドとバスの最適な運行管理などに取り組んでおり、アフリカでのMaaS(乗り物のサービス化)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)分野にも目を配る。電動化の動きは少ないが、ハイブリッド車(HV)を優遇する国があり「(電動化は)政府やアフリカの人にとって良い提案をしたい」(大塚部長)とする。

コロナ禍に襲われた20年は人道支援の一環で、国連機関にメンテナンス部品を無償提供した。アフリカへの貢献を考え、アフリカの成長とともに事業を拡大することを重視する。車市場は足元では新型コロナの懸念は残るが、人口数などから将来は年間200万台規模(18年は126万台)を予測。大塚部長は「将来的に年間50万台の販売を目指す」と意気込む。

日刊工業新聞2021年2月10日

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