廃校を活用した新しいインキュベーション、次の100年を育てる学校に
廃校活用 インキュベーション施設
次の100年を育てる「学校」―。なごのキャンパス(名古屋市西区)は13―15日の3日間、開業1周年記念イベント「ナゴフェス2020」を開催する。スタートアップ経営者同士の対談や大学生のアイデアピッチコンテストだけでなく、小学生向け起業塾など幅広い年齢層を対象にしたイベントを実施。「スタートアップ不毛の地」と言われ続けた名古屋が徐々に変わりつつある。(名古屋・浜田ひかる)
なごのキャンパスは廃校を活用したインキュベーション施設。東和不動産(名古屋市中村区)が運営し、名古屋商工会議所やパソナJOBHUB(東京都千代田区)などが協力。創業支援や金融支援相談ができる環境を整えており、名古屋市も交えた官民一体運営を行っている。総合運営に携わる粟生万琴企画運営プロデューサーは「コンセプトが次の100年を育てる学校。未来の名古屋経済を構築するために、次の世代を育てていく必要がある」と意気込む。
【大企業も入居】
同施設の利用者は約100社。スタートアップだけでなく、豊田通商やNTT西日本など大企業が入居。また、東京に本社機能のあるスタートアップが名古屋の拠点としても利用する。ほかにもイントレプレナー(社内起業家)人材や小中学生、高校生が出入りするなど、多種多様な人が一堂に会する場としての機能を発揮する。
相談相手求め/新規事業拠点 共創の場
入居者同士の交流にはビジネス用チャットアプリケーション(応用ソフト)「スラック」を活用。なごのキャンパスに関わる人が参加でき、200人規模のコミュニティーが形成されている。部活動も盛んで、金曜夜に開催される「ハイボール部」といったユニークな活動もある。先輩起業家への相談やアイデアの壁打ちなど、起業家同士の交流の場となっている。
入居理由はさまざまだ。スタートアップの製造業向けIoT(モノのインターネット)を展開するピノベーション(名古屋市西区)の鳥羽伸嘉社長は「相談できる相手を求め」入居した。粟生プロデューサーをはじめコミュニティーマネジャーが在籍し、ビジネスマッチングの創出や新たな人脈形成などを支援してくれる。
スタートアップとの交流目的以外に、新規事業の拠点活用として入居するケースもある。中京テレビは小学生プログラミング教室など新規事業を担うビジネス推進局が活用。次世代を担う小中学生を育成するため、同施設に入居する教育×ITの「エドテック」系スタートアップとの連携も模索する。
【手厚い支援体制】
支援体制は手厚く、名古屋商工会議所の職員が常駐する。創業や事業計画のアドバイスから補助金申請のサポートなど、さまざまな相談に乗る。法人会員として登録する名古屋銀行は、7月から金融支援窓口「金融よろず相談窓口」を隔週で開催。すでに50社が相談に訪れるなど好評だ。
一方で、23年開業予定の「ステーションAi」との差別化は喫緊の課題だ。粟生プロデューサーは「なごのキャンパスをプラットフォームとして底上げし、大企業や中小企業との“共創”に結びつけていきたい」とした。