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約700校の小学校が導入した児童見守りシステム、受託企業が倒産した資金のからくり

AIプロジェクト、「システム導入→売却→売却代金を得る」

2008年9月設立のAIプロジェクトは、関係会社から児童見守り安心システム「ツイタもん」の運営を受託していた。ツイタもんはランドセルに取り付けたICタグで、児童の校門通過時刻を記録する。13年に大阪府池田市内の全市立小学校に導入して以降は全国に営業エリアを広げ、19年3月期には年売上高約10億9400万円を計上。20年12月時点で約700校の小学校が導入し、約23万人(有料会員約7万人)が利用する規模となっていた。

導入校数が増える一方、システム導入費用の支払いが先行していたことで資金繰りは次第に悪化していった。そこで資金負担の軽減を図るために、リースバック取引や第三者(ホルダー)にシステムを売却し、売却代金を得ることで資金を確保する形が徐々に増加。本来であれば「システム導入→運用→長期にわたり会員収入を得る」だが、「システム導入→売却→売却代金を得る」となっていた。

その結果、システム売却が滞ると資金繰りが厳しくなる状況に陥っていた。また、急速な導入校数の増加に伴い設置工事などに人員を割いたことで、有料会員の加入促進活動がおろそかになり、会員収入が低迷し資金繰りが逼迫(ひっぱく)。20年2月には取引金融機関にリスケを要請、福岡県中小企業再生支援協議会へ再生支援も申し込んだ。

さらに同月に前社長が死去したことで社内体制が混乱。経営状態は悪化の一途をたどり、20年3月期の年売上高は約6億2300万円にまで落ち込み、営業段階から赤字を計上。約4億6000万円の債務超過に陥っていた。

同年4月以降は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で休校措置が取られたこともあり、有料会員の獲得や新たなホルダーとの商談交渉が進まずに資金が枯渇。前取締役会長の資金流出や多重リースなど不正取引も発覚し、多額の損害賠償請求を受けるなか、同年12月21日に民事再生法の適用を申請した。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2021年2月9日

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