上場企業の関係会社はつぶれない―。「不倒神話」など存在しなかった中堅運輸業者の“横領倒産“

日新からすれば50を超える傘下企業の1社にすぎないが…

  • 0
  • 3
グループ企業管理の難しさを再認識させられる倒産劇(写真はイメージ)

東証1部上場の国際物流大手、日新の持分法適用関連会社である新栄運輸が10月19日に東京地裁へ民事再生法を申請した。同社は1954年の設立以来、多数のタンクローリー車を使って、各種危険物を主体とした石油製品などの陸上貨物輸送を手がけてきた。日新からの毎期安定した受注が大半を占め、地元同業者の間では中堅クラスの運送業者として一定の知名度を有し、ピーク時の91年12月期には年売上高約12億1900万円を計上していた。

上場会社による出資を信用に、堅調な業績と営業基盤から「倒産」の2文字とは縁遠いはずだった。関係者の誰もが想像できない事態を招いたのは「経理責任者だった元専務による長年の横領が発覚したため」(取引先関係者)。元専務が十数年にわたり会社資金を私的に流用し、会社名義で多額の資金を簿外で借り入れていたのだが、民事再生法申請直前の9月下旬に不正が発覚した時には、すでに資金が枯渇していた。

今回の事例を振り返ると、ひとつの疑問が浮かぶ。グループトップの日新は、傘下企業の不正に気づかなかったのかということだ。両社には出資関係があり、非常勤だが、日新の執行役員が取締役を務めていた。だが、日新のホームページや有価証券報告書を見ても、新栄運輸の社名はすぐに見当たらない。

ドライな表現になるが、年商1000億円超の日新からすれば、同8億円の新栄運輸は国内外の50を超える傘下企業の1社にすぎない。自社グループの持分法適用関連会社が倒産したにもかかわらず、一切のプレスリリースがないのは開示基準に当てはまらない上、会社規模も小さく、相対的な重要性に乏しいとの判断なのだろう。

上場企業の子会社・関係会社はつぶれない―。かつて存在した「不倒神話」はすでに崩壊していること、そしてグループ企業管理の難しさを再認識させられる倒産劇であった。

(文=帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞2020年12月22日

キーワード

関連する記事はこちら

特集