Kポップカルチャーに親しむ新世代、ビジネスの最前線でどんな日韓関係を築くのか?
Kポップを代表する人気グループBTS(防弾少年団)。母国・韓国にとどまらず世界中で一大旋風を巻き起こしている。美しい容姿に洗練されたダンスパフォーマンス。日本の若者も彼らのファッションや会員制交流サイト(SNS)を通じて発信される「日常」に熱い視線を注ぐ。
翻って歴史認識を巡り戦後最悪とされる日韓関係。とても同じ国とは思えないほどの乖離(かいり)を感じる。
政府間の対立にかかわらず、活発な民間交流が繰り広げられてきたのが昨今の両国関係。冬ソナブーム、サッカーワールドカップの共同開催。互いを知る機会は多々あった。その上で、それぞれが実体験に基づき自身の価値観で相手国を捉えてきた。
日本は2019年に韓国向け輸出管理の厳格化に踏み切ったものの「政冷経熱」は長らく続いてきた。20年秋に15カ国が合意した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、日韓のこれ以上の関係悪化を食い止めるきっかけになるとの見方もある。世界貿易の3割を占める巨大市場の深耕を通じて、ビジネスチャンスが見込まれるからだ。
当面の焦点は、日本企業の資産売却が迫る元徴用工問題だが、たとえ緩和されたとしても喉に刺さった小骨のように歴史問題がくすぶり続ける構図が大きく変わることはないかもしれない。
一方で、両国を隔てる多くの懸案に向き合うことがないまま、無邪気にポップカルチャーに親しんできた日本の若い世代がビジネスの最前線に躍り出る日はそう遠くない。その時にどんな関係を築くのか。年代が上がるにつれ、厳しさが増す韓国観だが、目線を変えると両国の新世代間に新たな可能性も見えてくる。
(文=神崎明子)
日刊工業新聞2021年2月8日