沖縄の貧困は「頑張れない社会構造」に原因?「出る杭をたたく」風潮は日本の縮図

『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』著/樋口耕太郎氏インタビュー 

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沖縄のビーチ(イメージ)

―沖縄の貧困問題の根源が“頑張れない社会構造にこそある”と本著で述べています。

「16年前に沖縄でホテルを経営していた。月曜がやってくるのが苦しいという従業員の姿を目の当たりにした。目の前の人間が自分を生きられない状況にあることは経営者にとって一番苦しい。彼らから元気を奪っているのは、人間関係や社会関係の圧力、親子関係のトラウマが背景にある。大学の学生も元気がないし、反発せず穏やかだが、あらゆることに消極的で全然幸せに見えない」

「頑張れない理由が自分にあると思い込み、自己肯定感が低いことが問題だが、根本原因は(チャレンジに対して許容性の低い)社会の側にもある。本当にやりたいことが親や社会に許容されない、そこで諦めた自分を許せない、そうした気持ちを癒やしたかった」

―沖縄経済同友会の常任幹事を務めています。沖縄社会に切り込むような内容ですが、風当たりは強くありませんか。

「踏み込みすぎると人を傷つけるが、そよ風でも意味がない。ボール1個ずれるとデッドボールだが、ぎりぎりストライクを狙いに行く“内角高め”のメッセージこそが社会の役に立つ。たまたま沖縄にいたので書いたが、(出身地の)岩手にも全く同じことが言える。日本の問題の本質が沖縄にはある」

―出る杭(くい)をたたく沖縄の風潮を日本の縮図と表しました。

「沖縄には(経済活性化のための)あらゆるビジネスプランや戦略があった。本土から有能な人も来た。補助金も地理的優位性もある。ただ全てがうまくいかないのは人がボトルネックだからだ。サボタージュしなければ(出る杭が打たれ)彼らの居場所がなくなるという人間的・社会的問題をクリアせずして、あらゆる地方創生は無意味だ。ビジネスコンテストや補助金をやれば何かが解決するという考えはお門違い。人に対して関心を向けてこなかった社会がそういう問題を抱えるのは当然だ」

―乗り越えなければならない壁は何ですか。

「“世界に伍(ご)する”という発想を捨てなければならない。米国のオープンイノベーションを日本人がまねしてうまくいくわけがない。構造そのものに問題がある資本主義のパラダイムを追いかけても、追いついたときに社会はボロボロになる。一方、例えばウィキペディアは売り上げがゼロで株主も配当もない。資本主義では経済活動があった痕跡がないが、人知が生まれ人々の思考がつながっているのは事実。既存の枠組みとは全く違った持続可能な世界を模索するしかない」

―求められることは。

「一人ひとりが自分を生きること、社会に合わない人間を許容する社会的枠組みをつくること。家族あるいは企業がそういう環境をつくり、地域、社会、国家へと下から上に拡大していく。本土が沖縄を語る際、人ごととして表面上の優しさを向けても意味がない。沖縄問題を本土側が自分事と捉えて初めて問題が解決する」(大阪・大川藍)

樋口耕太郎氏
樋口耕太郎(ひぐち・こうたろう)氏 トリニティ社長、沖縄大学人文学部国際コミュニケーション学科准教授
89年(平元)筑波大比較文化学類卒、同年野村証券入社。01年レーサムリサーチ(現レーサム)に移籍し、金融事業を統括。04年沖縄県のサンマリーナホテルを取得し、独自の手法で再生。06年からトリニティ社長。12年から沖縄大学人文学部准教授。岩手県出身、55歳。
『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社 03・5395・8289)

キーワード
沖縄 貧困問題

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