米ゼロックスと契約終了、欧米に挑戦する富士ゼロックスは自社ブランド販売を準備
富士ゼロックスは、米ゼロックスとの技術契約が終了し、4月にアジア太平洋地域のみにとどまっていた販売圏が欧米まで拡大する。社名も「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更する。新たな船出を前に、今後の戦略や意気込みを玉井光一社長に聞いた。
―欧米では、まずOEM(相手先ブランド)供給を通じ欧米市場の土台固めをし、今後の自社ブランドによる販売につなげる方針を掲げています。
「OEM供給先として既に何社か契約した。自社の工場で生産できない分は電子機器製造受託サービス(EMS)に委託することも検討しており、(自社工場で)オーバーフローするくらい受注したい。2020年度中に、欧米向けに何らかの出荷を始める。それと並行して、自社ブランドによる販売に向けた準備も検討に入っている。ただ新型コロナウイルス感染が再拡大しており、具体的にスタートする時期は慎重に見極めたい。コロナ禍の影響が落ち着いて経済が復興する少し前に展開を始める」
―20年はコロナ禍によるオフィス出社率の低下で印刷量が落ち込んだ一方で、複合機の販売は堅調でした。
「印刷量は大きく下がった。20年度があまりにも落ち込んだ影響で、21年度は1ケタ%くらい戻るだろう。ただ(ペーパーレス化の流れもあり)将来的にはダウントレンドになっていく。一方、20年4―9月期の複合機販売台数は、前年同期比で増加した。コロナ禍で業績が厳しくなれば普通は開発費を絞るが、当社は新製品を果敢に発売し、奏功した」
―事務機器業界では、ITサービス事業の拡大に力を入れる企業が増えています。
「ハードからソフトへのシフトではなく、両方伸ばしたい。電子署名サービスや電子文書の管理ソフトウエア『ドキュワークス』など、コロナ禍でニーズが増えているソリューションもある。一方(複合機などの)ハードはやりつくしたと思われがちだが、そんなことない。(複合機のあり方を大きく変えるような)新しい製品も4月以降に発表する」
―4月に社名を変更します。意気込みを。
「社名にふさわしい商品を出していく。単なる(これまでの技術の)『アプリケーション(応用)』ではなく『イノベーション(革新)』を展開していく」
記者の目/自社ブランド展開時期カギ
欧州市場は、国内以上にテレワークが進んでおり、オフィス印刷量の低下が著しい。ただ玉井社長は、欧州向けOEM供給先の確保に手応えを感じている様子で、幸先は良さそう。今後は自社ブランドによる展開開始の時期の見極めが、一つのカギとなりそうだ。(張谷京子)