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セコムや弁護士ドットコムもサービス拡充、「電子契約」の利用者はどこまで伸びる!?

新型コロナウイルス禍による在宅勤務の広がりを背景に、契約書を電子化する「電子契約」の利用が増えている。セコムトラストシステムズ(東京都渋谷区)は、2020年4―6月期の電子契約サービスへの問い合わせ件数が300件超と前年同期の数十件から急増。弁護士ドットコムの電子契約サービスは、新規導入社数が4月に6544社と前年同月比で3・1倍に増加した。各社ともサービスの使い勝手を高めたり、パートナー企業と組んだりして拡大する需要を着実に取り込む方針だ。(取材・大城麻木乃)

クラウド型展開

セコムトラストシステムズのサービス「セコムあんしん電子契約スマート」はクラウド型の電子契約サービスで、請負契約書や発注書などを電子化できる。同社のサービスを導入する企業は大手企業を中心に数百社あり、その企業が電子契約を交わす企業数(ID発行数)は約20万社ある。対面での営業が難しい中、4月末にはウェブを通じて申し込む1カ月の無料お試し版をリリースした。300件を超える問い合わせ企業にはまず無料版をすすめ、着実に導入につなげたい意向だ。

さらに、7月以降は運用規則を緩和し、使い勝手を高めた。従来は電子契約書といえども、顧客が最初に取引先と電子契約書を交わす場合、相手先確認として紙による代表者印の付いた申込書が必要だった。しかし、在宅勤務者が増え、紙でのやりとりは非効率なことから、相手先確認は窓口の担当者の名刺や社員証のコピーの画像で承認できるようにした。

4月以降の問い合わせの中で、「“脱はんこ”のニーズがあった」(鈴木徹也専務執行役員)ことから、対応したという。

事務機大手と提携

一方、弁護士ドットコムはリコー、富士ゼロックスなど大手事務機メーカーと相次ぎ業務提携し、事業を拡大している。

リコーとは今月、同社の法務支援クラウドサービス「リコー・コントラクト・ワークフロー・サービス」と弁護士ドットコムの「クラウドサイン」を連携したサービスの提供を始めた。リコーのサービスは契約書を交わす前段階の法務に関連する書類作成を支援する。両社が組むことで、契約書の作成から契約の締結までを一貫してクラウド環境で行えるようになった。

具体的には、リコーのサービスで契約の事前相談や回答を記録できるほか、人工知能(AI)により契約書面の確認作業を自動化することが可能。ただ、従来は他社と実際に契約を結ぶ際には契約書の印刷や契約企業の押印が必要だった。弁護士ドットコムのクラウドサインと組み合わせることで、他社との契約手続きもウェブ上で完結できる。

契約作業を電子化することで、出張時や在宅勤務時でもパソコンやスマートフォンから契約を締結できる。価格は300ユーザーで月14万円(消費税抜き)から。まずは大手企業向けにサービスを提供し、3年で50万文書での活用を目指す。

また富士ゼロックスとは、同社の国内販売網を通じてクラウドサインを販売する。これまで富士ゼロックスは紙の電子化による文書管理の導入支援を得意としてきた。クラウドサインを販売することで、従来から手がけてきた電子化導入支援に加え、契約書の電子化や適法性を担保した導入・運用支援までを合わせて提供し、より幅広い企業の契約業務のデジタル化を後押しする狙いだ。

IT調査会社のアイ・ティ・アール(東京都新宿区)によると、20年度の国内電子契約サービス市場の売上高は102億円となり、前年度比約6割の増加を予想する。

6月に内閣府や法務省、経済産業省が在宅勤務などのテレワーク推進のために、契約書への押印不要の見解を示したことも追い風となり、「書面・印鑑を廃止し、電子契約を導入する企業が急増する」(同社)と指摘する。今後も市場は右肩上がりで伸び、23年度には198億円まで拡大すると見込んでいる。

日刊工業新聞2020年7月24日

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