携帯通信大手の寡占が続きかねない…MVNOの価格優位性をどう保つ?
携帯通信回線を借りて格安スマートフォン事業を展開する仮想移動体通信事業者(MVNO)が苦境に直面している。総務省の要請を受け、携帯通信大手が格安プランを相次いで打ち出した結果、価格優位性が薄れつつあるためだ。対抗策に踏み切るMVNOも相次いでいるが、このまま消耗戦の様相が強まれば経営体力の劣る事業者が不利になり、携帯通信大手の寡占が続きかねない。
接続料値下げカギ
「携帯大手の廉価プランはMVNOに深刻な影響を与える可能性がある」―。MVNOなど53社で構成するテレコムサービス協会のMVNO委員会は、19日の総務省の有識者会議でこう訴えた。
携帯大手は、月間データ容量20ギガバイト(ギガは10億)で3000円以下の格安なプランを発表。MVNOの主戦場と言える3ギガバイトなどの小容量でもサブブランドを通じて料金を下げてきた。
MVNOは携帯大手にデータ接続料を支払って通信設備を借り、消費者にサービスを提供している。このデータ接続料が下がらない限り、大幅値下げに踏み切るのは難しい。MVNO委員会はデータ接続料を3年間で5割低減するとの総務省の目標について、前倒しすることなどを要望した。武田良太総務相は「MVNOは携帯通信市場において重要な競争の軸だ」と述べ、データ接続料低減に向けて取り組む方針だ。
ただ足元で携帯大手の新プランに対抗する観点などから、大胆な値下げを決断するMVNOも相次いでいる。Y.U―mobile(東京都品川区)は、3月1日に20ギガバイトで3980円(消費税抜き)のプランを投入する。動画配信サービス「U―NEXT」の利用料金込みという特徴を打ち出した。
関西電力傘下のオプテージ(大阪市中央区)は、5ギガバイトで月額1380円の新プランを2月1日に始める。従来は3ギガバイトが1510円からだった。ジュピターテレコム(JCOM)は、総務省が同社の地域会社を電気通信事業法の規制対象に加えるべきだとして意見募集を始めたことを受け、通信料と端末代金を完全に分離する。その上で、20ギガバイトで2480円、5ギガバイトでは1480円と約半額に値下げした新プランを2月18日に始める。
JCOMの石川雄三社長は「携帯大手のようなアンリミテッド(通信容量制限なし)はMVNOにとってきついのは事実」と話す。だが、携帯大手の利用者のうち20ギガバイト以上を使っている人は約10%にとどまるとの総務省の調査を踏まえ、小・中容量帯の需要を狙う。
携帯大手の格安プランは消費者にメリットが大きい一方、MVNOを消耗戦に追い込み、競争力を削ぎかねない。そうなれば携帯大手の寡占状態が解消しない恐れもある。総務省には携帯通信市場全体を意識した競争政策が求められる。