JCOMの狙いは若者に届くか?動画配信で顧客基盤の拡大目指す
―2020年はコロナ禍でスポーツや音楽イベントの中止や延期が相次ぎました。21年はどのような手を打ちますか。
「イベント開催状況が大きく好転するとは思えないが、在宅時間が増え、自宅でのエンターテインメントの楽しみ方が多様化するだろう。既存の放送チャンネルを中心に、シナジー(相乗効果)を生み出せるサービスを展開していく。メディアとしての価値が上がれば広告の価値も上がる。21年度に向けて広告事業も強化していく」
―どのようなシナジーを生み出して新規事業を創出しますか。
「例えば、インターネットサービスを補完する形で、ネット利用で生じた困りごとを解決する保険事業を20年に始めた。こうした既存のサービス領域とシナジーを生む事業を作る。地域課題を解決する事業も展開したい。交通や医療などの課題を解決することで(営業エリアである)地域からのエンゲージメント(愛着)向上につながる」
―主力のテレビ事業では、動画配信サービスの米ネットフリックスとのセットプランを始めました。
「若者を取り込むキーワードは、放送とインターネットの融合だ。ネットフリックスはとても(コンテンツ力が)強いが、海外では動画配信サービスを複数契約する人が多く、日本もそうなるだろう。同社との連携強化のほか、他の動画配信事業者との連携も考えている」
―格安スマートフォンサービスも提供しています。携帯通信大手が相次いで打ち出す低料金プランにどう対抗しますか。
「NTTドコモの『ahamo(アハモ)』を皮切りに、月間データ通信量20ギガバイト(ギガは10億)が中容量のスタンダードになった。携帯大手のような使い放題は無理だが、20ギガバイトまでは退場する気はない」
「当社の強みは(ケーブルテレビ事業などで培った)地域密着型のサポート力。携帯大手とは異なり、オンライン限定にはしないだろう。料金だけでなく、フィジカルとデジタルでサポートの価値を高め、映像サービスとも組み合わせて差別化する」
記者の目/サービス連携で顧客獲得
JCOMの顧客はシニア層が多く、若者の取り込みが十分でないとの課題認識が強い。また、従来はテレビを顧客基盤の中心に据え、既存の契約者に固定通信や格安スマホなどの他サービスを提供していたが、20年に格安スマホサービスを拡充し、外部からの顧客獲得に力を入れている。各サービスを連携させて多様なニーズに応え、顧客基盤拡大を目指す。(苦瓜朋子)