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三井物産社長「海外の石炭火力運営、撤退前倒しを検討」

三井物産社長・安永竜夫氏インタビュー

―コロナ禍および環境関連での事業環境をどう見ていますか。

「中国や台湾、ベトナムなど東アジア・東南アジアでコロナ禍からの経済回復が見られており、こうしたマーケットを意識した事業を展開していきたい。環境関連では、各国がカーボンニュートラルを目指す中、その過渡期の役割としてガスの有用性は高まっている。液化天然ガス(LNG)案件をしっかりと推進できている。また、ペットボトルの再資源化ビジネスも進めている」

―収益体質改善の取り組み状況は。

「2020年4―9月期決算で、21年3月期の基礎営業キャッシュフロー(CF)を期初見通しの4000億円から4800億円に引き上げた。一方で、ダメージコントロールや構造改革をしなければならない分野も見えてきた。覚悟を決めて事業を見極めることも必要だと考えている」

―バイデン米大統領誕生による事業への影響はいかがでしょう。

「米国が自由貿易の枠組みに戻ってくることを期待している。バイデン大統領が重視する環境対策面では、当社は米国でこれまで水素ステーション運営会社への出資や分散型太陽光発電事業会社の買収を実施してきた。海外での石炭火力発電所の運営では、30年を撤退の一つのめどにしていたが、前倒しで検討していくことが必要だ」

―中国のテンセントとの協業は進展していますか。

「テンセントの子会社と日本で動画配信の合弁会社を設立するなど協業を進めてきている。連携強化に向け、コロナ禍を契機に新しいビジネスモデルづくりを検討している。インバウンド需要が消失する中、日本の食品や消費財、コンテンツなどの販売促進支援ができないかと考えている」

―マレーシアを拠点とするアジアの病院大手で、筆頭株主になっているIHHヘルスケアによる先進医療の進展状況は。

「IHHグループの合計3000万人の患者データを生かし、オンライン診療や患者ごとにカスタマイズしたサービスを提供していきたい。IHHが各国で運営する病院が持つデータとの互換性を実現するシステム構築を年内に完成させたい」

【記者の目/特徴的なビジネス創出急ぐ】

安永竜夫社長は4月の会長就任後は、若手の教育により力を入れたいと語る。グループ会社の社長に30代の人材が就任するケースもあるなど、総合商社では珍しい取り組みも見られる。「人の三井」の伝統を受け継ぎつつ、注力する非資源分野をはじめ、特徴的なビジネスの創出を急ぐ。(浅海宏規)
日刊工業新聞2020年1月22日

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