「出勤者数7割削減」が引き起こす苦悩、中小製造業のリアル

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従業員の抗原検査を実施してきた金子産業は、昨年12月からPCR検査に切り替えた(平塚工場内での抗原検査=同社提供)

2度目の緊急事態宣言下、事業者は接触機会低減のためテレワークやローテーション勤務の活用で、出勤者数の7割削減を要請されている。特に経営資源が限られる中小企業には、大きな負担がのしかかる。稼働維持と感染症予防の両立へあの手この手で苦闘を続けている、中小企業の製造現場を見る。(市野創士)

加工や組み立て、メンテナンスなど、在宅勤務では対応が難しい業務は少なくない。包装機・省力化機械の印南製作所(東京都足立区)では現場を九つの区画に分けた上で、各区画の行き来を管理。接触の抑制と接触情報の追跡を徹底する。

書類や部品の受け渡しなどで従業員が自由に行き来してきたフロアだが、2020年5月から各区画ごとに移動可能時間を定め、特定の従業員のみが行き来するようにした。感染リスクを下げ、感染者が出た場合にも誰と接触したかなどが追跡できる体制を整えた。もちろんパーテーションや手指の消毒液の設置を増やすなど、日々の対策も講じている。

だが、印南英一社長は「コロナ禍は人命に関わる点、そして対策をしても従業員の感染を完全に防げない点で今までの経済危機とは異なる」と警戒を怠らず、さらなる対応策を考え続けている。

バルブ製造の金子産業(東京都港区)は本社と平塚工場(神奈川県平塚市)などに勤務する全従業員約100人を対象に、PCR検査を毎週月曜日実施している。20年7月から工場に医師と看護師を派遣して全社員の抗原検査を実施してきたが、さらなる精度向上のため12月に民間のPCR検査に切り替えた。

検体を指定先に郵送すると、1―2日で結果が判明する。全社員の感染状況を把握すれば、感染拡大防止とともに取引先などに安全性をアピールできる。中村善典社長は「中小企業にとって従業員一人ひとりがコアメンバー。従業員の健康は守る。ある意味では来期以降の巻き返しのための先行投資」と話す。従業員からは感謝の声が上がり、結束力が強まっているという。

精密板金加工の浜野製作所(東京都墨田区)では、20年4月の前回の緊急事態宣言発出以前から、社内マニュアル「新型コロナウイルス感染症対策について」をまとめ、対策を講じてきた。その後の情勢に合わせて内容も改訂し、21年1月時点で第16版となる。全従業員へ通勤についてもヒアリング。出社時間を調整したり、通勤手段も従業員同士の乗り合いで自動車通勤に切り替えたり、自転車を利用したりと、3密回避に取り組んでいる。

浜野慶一最高経営責任者(CEO)は「中小企業も大手の下請けとしてではなく、信念と理念を持って社会に提言しなければならない。コロナ禍では基本に立ち返って土台を固め直し数年後のさらなる飛躍を目指す」と、従業員の健康を守りながら、現場力の再強化にも取り組み、ニューノーマル(新常態)へ向けた準備を進める。

コロナ禍にあって、中小企業の取り組みは各社各様だ。従業員の健康と製造現場を守りきることができるのかが、ニューノーマルにおける日本の製造業の行く末をも左右する。

日刊工業新聞2020年1月22日

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