バイデン政権は「同盟国や友好国と協調して中国に対峙」

元外交官・日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長インタビュー

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大統領就任式

協調路線、国際社会は歓迎

トランプ前政権の下で深刻化した国際社会の亀裂や米国社会の分断を解決することができるのか。元外交官で日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長に、バイデン新政権の展望を聞いた。

―国際社会でバイデン政権発足の意義は。

「トランプ前政権は『アメリカ第一主義』のもと米国の利益を優先する政策を推進したが、全ての国がこれを受け入れていたわけではない。バイデン政権が多国間協調路線をとることを国際社会は歓迎するだろう」

―新型コロナウイルス対策や経済政策などバイデン政権の主要政策をどう見ますか。

「6日に連邦議会議事堂乱入事件をあおるような発言をしたことで、トランプ氏への風当たりが非常に強くなった。上下院で民主党が勝ったことも含め、バイデン政権が政策を進めやすい状況だ」

「気候変動への対応は、バイデン政権にとって一丁目一番地の政策になる。ケリー元国務長官を大統領特使に指名したことから、国際社会でも指導力を発揮しようとするだろう。新型コロナ対策や経済再建のためのインフラ開発にも多くの資金を投じるだろう」

―米国の産業界に与える影響は。

「民主党は配分政策を重んじ、富裕層や企業への増税を実施する可能性がある。その意味で産業界が民主党政権を警戒するのは自然なことだ。しかし、米国経済はコロナ禍で傷ついている。新政権は経済再建に向けインフラ整備や医療体制の拡充などの財政支援を実施する。産業界は当然歓迎するだろう」

「米国でも製造業を中心に産業の空洞化が進んでいるが、バイデン政権は国内に製造業を戻すよう働きかける。高い人件費などを受け入れ、国内回帰を進めるか民間企業の判断が問われる」

―米中関係や日米関係はどのように変化しますか。

「米中対立は続くが、アプローチの仕方が変わるだろう。同盟国や友好国と協調して中国に向き合おうとするだろうし、日本や欧州が果たす役割が増える。中国に対し人権問題や民主化についても厳しく追求する立場をとるだろう。専門家の役割が大きい伝統的な外交は日本にとって好ましい面がある一方、民主党政権は同盟国に負担の拡大を求める傾向がある。日本に対しても防衛費増大や在日米軍駐留経費の負担増を求める可能性がある」

―バイデン政権は米国の分断を解決できそうですか。

「米国の分断は今に始まったわけではなく、南北戦争の頃から形を変え続いている。中南米やアジアからの移民が増え、2045年には非白人の人口が白人を超えるという試算がある。所得格差も大きい。政治家がこれらの問題の解決に動くのは当然の行動だが、分断がなくなることはありえない」(森下晃行)

*取材はオンラインで実施。写真は日本総合研究所国際戦略研究所提供

日刊工業新聞2021年1月21日

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