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レアメタル不使用!硬さと耐熱性両立のマグネシウム材料、何に使える?

日大が開発
レアメタル不使用!硬さと耐熱性両立のマグネシウム材料、何に使える?

硬さと耐熱性を備えたマグネシウム製のバルク材(日大提供)

日本大学生産工学部の久保田正広教授らは、レアメタル(希少金属)を使わずに硬さと耐熱性を持つマグネシウム材料を開発した。マグネシウム粉末から小片状に固めた「バルク材」を作る際の製造方法を工夫。軽量なマグネシウムに、低コストで硬さと耐熱性を付加できる。マグネシウムは実用的な金属材料の中で最も軽いことから、自動車などの輸送機器の軽量化や燃費向上などが期待される。

マグネシウム粉末に、凝着や接合などの防止剤として「ステアリン酸」を添加。硬い小型の球で粉末をすりつぶす粉末加工法「メカニカルミリング」を利用し、同粉末を2―64時間処理した後、機械的に圧力と電流をかけ焼結する「放電プラズマ焼結装置」でバルク材を作製した。

メカニカルミリングで32時間処理した後のバルク材の硬さを測定すると、250度C、8時間の熱処理により処理前に比べ硬度が90HV(HVは硬さの指標)に倍増した。ほぼ同じ条件で処理した、イットリウムやジルコニウムなどのレアメタルを含む高強度耐熱マグネシウム合金「WE54合金」とほぼ同じ硬度を示した。また加熱と急冷の処理で素材の特性が変化し時間経過とともに硬くなる時効硬化では、WE54合金より優れた能力を示すことが分かった。

高硬度の原因を探るため、バルク材にX線を照射し、その回折パターンを分析。ステアリン酸の添加でマグネシウム単体だけでなく、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムなどが生成していることが分かった。またバルク材を作る際のメカニカルミリングの処理時間が長いほど、材料内に含まれるマグネシウムに対する酸化マグネシウムの割合が増え、材料全体の硬度が増すことも分かった。

菅政権は2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ達成を掲げている。その実現には自動車といった輸送用機器からの二酸化炭素(CO2)排出量などを抑えることが必要で、軽量化につながるマグネシウムの利用拡大もカギとなる。

日刊工業新聞2021年1月19日

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