NHK悲願の「届け出義務化」と「居住者情報照会」はテレビ離れを加速させるか

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NHKの公共放送としての在り方が改めて問われている。総務省の有識者会議が、受信契約に応じないテレビ設置者から割増金を徴収することなどを柱とした受信料制度の改革案をまとめた。営業経費低減や支払率向上に一定の効果があるとみられるものの、国民の理解を得るためには、2019年度末に1213億円ある内部留保(繰越剰余金)を用いた受信料引き下げなど視聴者への還元策も求められる。(苦瓜朋子)

設置届け出要望

「テレビ離れを加速させる」―。20年9月に開かれた総務省の有識者会議で、日本民間放送連盟は懸念を表明した。NHKがテレビ設置届け出制や未契約者の居住者情報照会の導入を要望したからだ。前田晃伸NHK会長は「テレビ離れはすでに進んでいる。設置届け出とは無関係だ」と反論したが、有識者からも「居住者情報を確認できても受信設備の設置確認は必要。効果は限定的だ」など否定的な意見が相次ぎ、導入は不適当とされた。

この代わりに浮上したのが、正当な理由なしに契約に応じないテレビ設置者への割増金制度。有識者からは有力な選択肢だとの見方が示された。1月中に召集される通常国会での成立を目指している。

低い支払率

NHKが示した要望の背景にあるのが、受信料支払率の低さ。19年度の支払率は83%で10年度の71%に比べて上昇しているが、諸外国に比べると低水準だ。テレビ設置の有無を確認し、契約を呼びかける戸別訪問活動にも年間305億円を要している。コロナ禍で訪問活動を停止した影響で契約数が減少しており、対面によらない営業活動の実現が課題となっている。

この課題解決策として浮上したのが、日本各地の住所情報を持つ日本郵便に受信料徴収業務を担わせる構想だ。武田良太総務相は「郵便局のノウハウを利用できないか実務者間で会議を始めた」ことを明かしており、日本郵便との間で新たな取り組みが始まる可能性がある。

高い受信料

一方で、NHK自身が身を切る改革も求められる。NHKは経費削減策として、現行のBS放送4チャンネルのうち、BS1、BSプレミアム、BS4Kを段階的に一本化する方針を示した。BS8Kは東京五輪・パラリンピックで活用後に在り方を決める。契約者にとっては視聴できる番組が減ることになる。

20年10月から地上波を含むBS受信料を従来比60円引き下げて月額2170円(消費税抜き)としたが、英国やドイツなどと比べて高額だ。繰越剰余金を積み立てて受信料に還元する方向性を示しているものの、早期の料金引き下げには否定的な姿勢を示す。これに対し、武田総務相は「コロナ禍において、早期にやらずしていつやるのか」とさらなる値下げを迫っている。

NHKは21―23年度の3カ年中期経営計画を1月中に発表する予定。20年8月に公表された計画案には受信料引き下げは盛り込まれていない。インターネット動画配信サービスの台頭などでテレビの設置台数が減少し、視聴環境が大きく変化する中、NHKの果たす役割を見つめ直す必要がある。

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