活況続く半導体産業、「SEMIジャパン」代表が懸念する課題とは?
車と連携 標準化議論
第5世代通信(5G)やIoT(モノのインターネット)の普及を追い風に、半導体産業の活況が続いている。半導体製造装置・材料業界の団体「SEMIジャパン」(東京都千代田区)の浜島雅彦代表に、業界が直面する課題や展望などについて聞いた。
―半導体産業と自動車産業をつなぐ取り組みを行っています。「SEMIは、自動車・自動車部品メーカーや半導体関連メーカーが参加するプラットフォームを主催。参加企業とともに、業界連携の課題や、その解決策について定期的に議論を行っている。それぞれの業界で文化が異なる中、いかにウィンウィンの関係を構築できるか。例えば、車載半導体の規格をどう標準化していくかは焦点の一つとなっている」
―米中摩擦の影響が懸念されています。「かつての日米摩擦の時代には、両国で政府間の抗争はあっても、産業界内での関係構築は続いていた。SEMIが主導している、半導体業界の意見交流を目的とする会合『ITPC』はその一つの例で、当時から現在まで続いている。最近は中国企業も参加するようになった」
―コロナで国をまたいだ移動に制限がかかり、一部では半導体製造装置の設置遅れが発生しました。対応策は。「(業界内で)状況を共有することが重要だ。例えば海外の現地情勢に関する情報や、海外現地法人への技術的な支援方法など。あくまでも非競争領域に限るが、業界内でプロトコル(規定)を持つことも可能かもしれない」
―他に半導体製造装置・材料業界で課題はありますか。「開発コストが莫大(ばくだい)になっていくこと。半導体の回路線幅を細くする『微細化』などの技術革新が進めば、それだけ研究開発投資は増える。同業界では互いに忖度(そんたく)することなく、フェアな競争が行われており、その点は評価すべき。ただ、その分、各社の開発コストは膨れ上がっていく」
半導体人材の不足を背景に、浜島代表は「まずは業界について知ってもらうことが大切」と話す。ただ、中国が台湾の半導体企業から技術者の引き抜きを行うなど人材獲得を急ぐ中、次世代人材に向けた業界PRだけでは不十分。人材獲得・育成に加え、人材流出をいかに防止できるかもカギとなりそうだ。(張谷京子)