トラックの「試乗会」や「競技会」もオンラインで!商用車メーカーがデジタル導入加速
国内商用車メーカーがオンラインの活用拡大を進めている。新型コロナウイルス感染症の広がりにより社内外の活動で「3密」防止が必要になった。営業活動や社内研修もオンライン化が進む。対面や接触が不可避と思われていた「試乗会」や社内の「技術競技大会」でも同じだ。オンラインならではのアイデアを取り入れてコンテンツの充実も図る。(日下宗大)
絶対に失敗が許されないトラックの衝突回避実験―。UDトラックスはこの映像をあえて生配信した。
11月24―25日に同社が開催した大型トラックの「オンライン試乗会」の一場面。今はコロナ禍で客を集めた試乗会が難しい状況だ。そこでUD本社に特別にスタジオを開設。製品の特徴を訴える番組を運送事業者向けに生配信した。試乗会を開いた2日間で、購入対象者576人が視聴した。
ライブ映像と収録済み動画を使い分けた。スタジオで開発などの担当者と司会者がトークしながら、番組がライブ進行する。
“試乗”する大型トラックの運転状況や基本性能に関しては収録動画を差し込んだ。トラックのキャブ(運転室内)に複数のカメラを設置して撮影。運転手の動きを詳細に捉えて視聴者に分かりやすくした。上空からも大型トラックが走行する様子を撮影した。
障害物を検知してブレーキが作動する機能はライブで実験した。当初は収録済み動画を検討していた。しかし「自信があるなら生配信でやろう」と視聴者が見守る中で実施。ライブの醍醐味(だいごみ)もあって、オンライン試乗会は成功した。
顧客からは「ライブ配信の臨場感があって面白かった」といった声が聞かれた。同社では今後も同様の取り組みを続ける考えだ。
いすゞ自動車はメカニックの整備技術を競う社内の世界大会、通称「I―1GP」の第15回大会をオンラインで開催した。社内のeラーニングシステムを応用して11月25―27日に競技。41カ国が参加した。従来はいすゞの国内トレーニング施設に世界中から選手が集結して技術を競い合っていた。だが新型コロナの影響で実現が危ぶまれた。
伝統を絶やさないため試行錯誤で手作り感もあるが、ウェブでやってみようと決めた。問題は競技の公正性をどう担保するかだった。各拠点で競技レイアウトを同じにしたり、競技の様子をカメラで撮影したり条件をそろえた。
パソコン上で回答する問題では「バーチャル故障診断」などを作成。実技競技はできないが、正確な修理プロセス思考が選手にどの程度あるかなどを点数化できるようにした。
オンラインならではの演出として、各チームに対する応援動画も募集した。一番の応援動画を選ぶウェブ投票も実施するなど、大会が盛り上がる仕掛けを作った。
日野自動車や三菱ふそうトラック・バスはインドネシア最大の電子商取引(EC)サイト内にトラックのオンラインストアを開設した。新型コロナの影響が深刻な同国市場でオンライン販売を強化している。
オンラインの活用領域は今後、拡大しそうだ。いすゞも大会の経験を糧にeラーニングをさらに活発に使っていく方針と話す。