技術人員の減少直面するゴミ焼却発電、遠隔監視や運転支援にビジネスチャンス

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10月中旬に稼働したタクマビル新館(左は本社棟、同社提供)

ゴミ焼却発電プラントメーカー各社が遠隔監視・運転支援施設を通じた顧客サービス強化を打ち出している。日立造船は2018年に、タクマは20年10月にそれぞれ新施設を稼働した。ゴミ焼却施設の自動運転に向けた技術の導入も進む。国内では少子高齢化による人手不足や施設の統廃合など課題はある。遠隔監視や運転支援、自動運転の取り組みは海外展開拡大を見据えた布石にもなる。(大阪編集委員・林武志、孝志勇輔、石宮由紀子)

「当社の社是『技術を大切に 人を大切に 地球を大切に』を具現化するにふさわしい建物が完成した」とタクマの南條博昭社長は本社(兵庫県尼崎市)敷地内で10月中旬に稼働したタクマビル新館(研修センター)についてこう力を込める。6階建てで延べ床面積約3300平方メートル。投資額は約20億円。プラントの遠隔監視・運転支援の拡充、技術人員育成などにつなげる。

約110人が働く新館は20人程度が技術サポートで勤務。6階では常時2人が24時間365日交代制で遠隔監視・運転支援に臨む。

日立造船は「Hitz先端情報技術センター」で、従来本社内で取り組んでいた遠隔監視・運転支援をしている。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ(大量データ)を駆使し、サービスの高度化などを目指す。

Hitz先端情報技術センターからの遠隔操炉(日立造船提供)

再生可能エネルギーの利用が進む一方で、国内のゴミ焼却発電施設は技術人員の減少に直面し、プラントメーカーによる支援が欠かせない。施設統合、老朽化刷新が一巡すれば国内市場の頭打ちも不可避となる。

タクマの南條社長が「再生エネ活用と環境保全分野における社会課題の解決に取り組み、お客さまへのサービス向上に努めたい」と強調するように、自前の遠隔監視・運転支援施設は海外展開を見据えたサービスノウハウ蓄積の場になる。

JFEエンジニアリング(東京都千代田区)は、ゴミ焼却炉の完全自動運転システムについて、自社で運営する処理施設への導入を順次進めている。運転員による燃焼の調整などを自動化する。ゴミの供給量や燃焼に必要な空気量などを制御するほか、発電量の増加も見込む。

荏原は本社と藤沢事業所(神奈川県藤沢市)にゴミ焼却施設の遠隔サポート拠点を持つ。中でも社内の経営資源が集中する本社では、調達部門も交えた技術支援をできる体制になってきた。大井敦夫執行役環境事業カンパニープレジデントは「ITの活用によるサポートは、メリットばかりだった」と振り返る。

19年にはリッジアイ(東京都千代田区)と共同でゴミ焼却施設向けに人工知能(AI)を活用した自動クレーンシステムを開発した。ゴミを識別して最適な状態に撹拌し、燃焼を安定化する。大井執行役は「今後のキーワードは5G(第5世代通信)」と強調。5Gでやりとりできるデータ量が増え、これまで取り組めなかった領域の故障予知診断なども容易になるとみる。

日刊工業新聞2020年12月28日

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