X線透視後も視認!股関節手術ツールを開発した青森の中小企業

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靱帯の固定部を表示する「MPFL透視ガイド」(ビット・テック提供)
レントゲン下でも視認できる透視ガイドのガイドライン(黒い直線部と円形部、弘前大学整形外科学講座提供)

靭帯固定部位を迅速に把握

ビット・テック(青森県五所川原市、木村英雄社長)は、膝関節手術の内側膝蓋大腿靱帯〈しつがいだいたいじんたい〉(MPFL)再建手術用「MPFL透視ガイド」を、弘前大学(青森県弘前市)整形外科学講座の石橋恭之教授と共同開発した。手術で大腿骨に穴を開ける場所を正確かつ迅速に示すツールで、Arthrex Japan(アースレックスジャパン、東京都新宿区)の手術道具をセットにした術式デバイスの一つとして3月に発売した。

【透視化後も視認】

太ももの大腿骨の膝側の形を模した透明な樹脂プレートでガイドラインを表示する。大腿骨と膝の皿の骨である膝蓋骨をつなげて支えるMPFLの再建手術では、大腿骨に穴を開けるためX線を確認しながら施術する。

透視ガイドを用いるとX線で透視しても製品のガイドラインが視認でき、患者の太ももにあてがって大腿骨とガイドラインを重ね、人工靱帯の固定部となる穴を開ける場所が正確に分かる。

両面とも透明で反転して左右の膝に用いることができる。サイズはM(縦165ミリ×横92ミリ×厚さ3ミリメートル)とL(縦205ミリ×横115ミリ×厚さ3ミリメートル)の2種類。ポリカーボネート製で、透視化後も視認できるラインにはステンレスとタンタルを使用している。

製品に表示の文字は樹脂を彫刻して溝にインクを入れ、さらに樹脂プレートを重ねて貼り合わせている。インクは内面のみで人体に直接触れない。貼り合わせには医療用の紫外線(UV)硬化接着材を用いる。ひっかかりや刺さり防止のため、製品の外面は手作業で滑らかに削った。木村社長は「技術とノウハウで安全性にこだわった」と胸を張る。

【外部連携カギ】

精密板金加工で半導体製造装置部品を手がけるビット・テックが医療分野に進出したのは2000年代後半。「青森県は医工連携に積極的で、自治体の働きかけがきっかけになった」(木村社長)。初めに安定性が高い移動式の点滴台を試作した。

医療機器の開発では一般的な工業製品と異なる安全性が求められ、難しさを感じたという。使用できる素材の選択肢が狭く、コスト高になる。医療への知見がないと収益化は困難だ。

医工連携が成功するためのカギは「製造を担う企業と医療現場の間をつなぐ製販企業にある」と木村社長。透視ガイドは検査や滅菌処理、梱包(こんぽう)といった最終工程を医療機器製造・販売のベアーメディック(茨城県大子町)が手がける。開発でも同社と試行錯誤して試作した。

木村ビット・テック社長は「滅菌装置などの設備や求められる仕様の知識など単独では困難なことが多い。製販企業と協力することが不可欠」と外部連携の重要性を語る。

医療現場のニーズ、製販企業との協力、自社技術とのマッチングなど医工連携は容易ではない。しかし、木村社長が目指す「複数組織で相互の信頼関係を築き、明確な出口戦略の基で開発段階から協力する」ことができれば医工連携の成功例も増える。

日刊工業新聞2020年12月28日

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