JDFの埋没耳矯正器具、肌の負担を減らすカギは?

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金属製ワイヤとシリコーンを組み合わせた埋没耳の矯正器具「イヤークリップ」

試作品や小型放射線装置の吊り下げ器具の組み立てなどを行うJDF(東京都板橋区、七井宗芳社長、03・5914・4311)は、埋没耳を治す矯正器具「イヤークリップ」を開発した。医師の提案により開発に着手。3年間の試行錯誤の上、販売にこぎ着けた。七井社長は採算が厳しく「割に合わない」と苦笑するが、誰かのためになっているという思いを支えとしている。

調整しやすく

埋没耳とは耳の上部が耳の付け根の頭皮下に埋没する先天性の病気。約400人に1人の割合で発症するとされる。放置すると手術が必要だが、生後約半年以内であれば矯正器具で治療可能だ。

開発のきっかけは埼玉県産業振興公社による医工連携の交流会だった。当初は「(孫の手のように)背中をかくものが欲しい」といった自社の狙いと異なるものばかりだった。その中で、埼玉県立小児医療センター(さいたま市中央区)の医師が提出した埋没耳の治療に関する記述が目にとまり、開発を思いついた。

埋没耳は放っておくと耳が埋没したまま成長してしまい、マスクやイヤホンが使えなくなる。現在、治療法は手術か矯正しかない。しかし、手術するには全身麻酔が必要で乳幼児には負担が大きい。そのため、医師がゼムクリップで矯正器具を手作りすることが多く、肌を傷つけないように工夫する必要があった。

乳幼児に装着。肌に負担を与えないように工夫した

そこで開発したのがイヤークリップだ。硬さにこだわった金属製ワイヤとシリコーンを組み合わせて製作した。埋没耳の矯正には定期的な調整が必要なため、「医師と長さや硬さ、材質を調整するのに最も苦労した」(金子俊夫開発技術部長)という。当時は連携していた医師が多忙のため、数カ月間も返信を待つことがあった。

医師の助言

試作を繰り返しながら展示会などでさまざまな意見や助言を聞き、2018年に病院の売店などで一般向け販売を開始した。製品の大きさは長さ約10センチメートル×太さ約3ミリ。色はホワイト、ピンク、ブルーを用意。すべて手作りだ。価格は1個1500円(消費税抜き)程度。

同社は医療機器製造業許可を持つが、イヤークリップを医療機器にしていない。事故などのリスクに備えると高価格になってしまうからだ。

それだけに「埋没耳の子を持つ親のことを思うと(医療機器には)できない」(七井社長)と判断した。価格を抑え、赤字も覚悟で提供する。

苦労して開発したイヤークリップだが、病院の売店での販売も簡単ではなかった。医師による事前の許可が必要だったからだ。金子開発技術部長は「医工連携は医師との関係づくりが不可欠。未経験だとビジネスに繋がりにくい」と指摘する。開発費がかかる上、医師の助言がなければニーズも分からないからだ。医療機器の場合、無料の回収・修理(リコール)のリスクもある。

現在は新製品の開発に挑んでいるが、独特の難しさがある。そんな状況でも七井社長は「こんなの作ってみたと提案するのが好きだ」と、モノづくり企業としての誇りを見せる。(渋谷拓海)

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