争奪戦が激化する「DX人材」、年収だけでない企業が実現すべきこと
コロナ禍で在宅勤務などのニューノーマル(新常態)な働き方が普及し、デジタル変革(DX)の流れが加速した。DXで経営のスピードアップも求められる中、社内文化や人事評価などを根本から見直し、従業員から経営者まで全員参加型の改革が問われるようになった。カギを握るのはIT人材。2020年は高い専門性と変革をリードする素養を備えた「DX人材」が、IT業界のみならず、産業界全体として一躍脚光を浴びた。
米国に続き、日本でもDXを推進するユーザー企業が社内にIT人材を取り込む動きが顕在化している。ITベンダーの人事担当は「社員が安心して働ける環境作りを進めないと、人材が流出する」という強い危機感を持っており、優秀な人材を高給で引き抜く事例も増えている。
SCSKは7月に年収3000万円を提示できる新人事制度を導入。既存の枠組みを超える優れた人材を「ADV職掌」と定義し、採用を進めている。日立製作所や富士通は、職務上の役割に応じて報酬が決まる「ジョブ型制度」を導入。能力に応じた待遇にかじを切った。
DXの実現には、企業や業界の枠を超えた連携も重要。20年はDX加速のために組織変革を進める企業も見られた。
富士通は4月、DXのコンサルティングに特化した新会社「リッジラインズ」(東京都千代田区・中央区)を始動。富士通本体のシステム構築(SI)力なども活用しながら、DXの提案から構築、運用まで一気通貫で行う体制を整える。NTTデータは10月に新組織「ソーシャルデザイン推進室」を新設した。同室を各部門のハブとし、公共・法人・金融部門を超えた連携、サービス創出を図る狙いだ。
コロナ禍で高まるDXニーズを着実に捉え、自社のビジネスの中核として成長させるためにも、今後もIT人材の獲得や企業・業界の壁を越えた取り組みが続くとみられる。