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コロナでも出会いたい!人間性を誤魔化せない「オンライン“対面”デート」は婚活の救世主?

今日はクリスマス。新型コロナの感染拡大で盛大にパーティーを開いたり、大規模なイベントを楽しむ雰囲気ではなくなってしまった。それでも大事なパートナーと過ごす大切な日であることは変わらない。

ところでコロナ禍で、婚活事情はどう変わっただろうか。人と会うこと自体が敬遠されがちな中、ましてや初対面の相手と会うことに気持ちが乗らないのは無理もない。そんな中、オンラインでの婚活が広がっている。マッチングサービス各社は相次いで「ビデオデート」のシステムを導入しており、コロナ禍でもマッチングの成約数を増やすべく工夫を重ねる。各社に導入の効果やオンラインデートで気をつける点などを聞いた。

チャットと対面、その間にビデオデート

「感染防止と同時に、対面で初めて会う際の不安感を解消できるツールとして使われた」。 「ゼクシィ縁結び」を運営するリクルートマーケティングパートナーズ(東京都品川区)の桜井まり恵ゼクシィ縁結び恋愛・婚活アドバイザーはビデオデートの効能をこう話す。当初、同機能は、直接会うオフラインでのコミュニケーションを代替するような使われ方がなされていたが、現在は直接会う前に相手のことを深く知るための手段として使われつつある。

桜井まり恵ゼクシィ縁結び恋愛・婚活アドバイザー(写真は同社の提供)

一般的にマッチングサービスの流れはチャットなどの非対面のコミュニケーションから、気の合った相手と直接会うというものだ。ただ、チャットなどでしか、コミュニケーションをとっていない相手といざ会うことに不安を覚えてしまうのは男女とも仕方がない。そこでビデオデートがチャットだけでは得られない情報から人柄を判断する手段になる。
 例えば、話し方。チャットで使っていた言葉遣いとの比較や声から想像していた人物像と乖離がないか見極められる。また、部屋の一部からその人の生活感を感じたり、相手の所作などチャットだけではわからない情報から相手の人柄を把握する。そのため、実際に会ってから「この人と一緒にいるのは難しいかも」という思いを回避できる上、自分自身が危険だと感じる人との接触を避けられる確率が高まる。

オンラインデートのイメージ

マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営しているエウレカ(東京都港区)でも4月からビデオデート機能を追加。同社の広報を担当する小野澤翔さんは、「ビデオデートについて、当社のアンケートでも利用したユーザーの約7割が満足と回答している。コロナ収束後も、利便性や安全性の面からビデオデート機能は使われていくはず」と語る。

これによって、これまでマッチングサービスの否定的な要素であった「素性の分からない人と会う」という不安点をある程度解消できるようになった。むしろ、「ビデオデートを使った人の方が実際に会う人の割合が増えている」(桜井さん)という。ビデオデートは、対面で会う補強材料にも、会わない補強材料にもなり得るということだ。

オンラインデートで気を付けるべき点は?

ただ、急速にオンラインでの婚活が進む中、どのように振る舞えばいいか戸惑う人も多い。桜井さんは気をつけるべき点は「『オーバーリアクション』、『服装』、『事前の質問事項』の3つが重要」だと強調する。

オーバーリアクションとは、対面と違って口や顔の動きが少なくなりがちなオンラインならではの技だ。対面の時より、細かなニュアンスが伝わりにくいからこそ、本人が思っている以上に「明るく」振舞うことがポイント。

服装はおしゃれでなくても、対面で会う時のように清潔なほうが望ましいし、短い時間の中で相手に聞きたいことをリストアップしておくことも必要だ。

3つに共通して言えるのは相手に対する「気遣い」だろう。実際、「挨拶や日常の所作がオンラインでも出てくる。ある意味、当たり前のことができる人がアプリ内でも人気がある」(桜井さん)というように、オフラインとオンラインの明確な境界線は無くなりつつあるようだ。

エウレカの小野澤翔さん(写真は同社の提供)

エウレカの小野澤さんも、「オンラインがオフラインの完全な代替になることはあり得ない」と話すものの、「オンラインでしかできないことが見えてくる中で、オフラインで何をするのかが重要になってくる」と予想する。実際、同社のアンケート調査では、「ビデオデートでしたいことは?」という問いに対して、「一緒にゲームをする」に回答が集まるなど、オンラインならではの工夫もみられる。 どちらか一方ではなく、両方の良い部分を「良いとこ取り」するスタイルが広がりそうだ。


マッチングサービスの今後

リクルートブライダル総研が調べた「婚活実態調査2020」によると、婚活サービスを利用して結婚した人の割合は13%と過去最高になった。特にネットを介した婚活サービスの進捗が目立つ。

ユーザーのボリューム層は20代から30代。この世代は物心ついた時からSNSと触れ合ってきた世代だ。この世代は「人間関係も恋愛関係も身軽なのが特徴」(桜井さん)のように、いつでも繋がれて、いつでも手放せる緩やかな人間関係を求めている傾向にある。実際、恋愛スタイルも多様化しているため、自分と相性のいい人を探す手段として、複数の人とやり取りできるマッチングアプリは効率的な面もある。

桜井さんは「現在は年収などの分かりやすい物差しだけではなく、自分のパーソナルな部分といかに合うかを重視する人が多い」と話す。同社もプロフィールなどは具体的にかつ、多くの情報を開示すること推奨する。気軽に繋がれるサービスだからこそ、多様な自分を見せ、思いがけない出会いを生む出す工夫が必要だ。

ネット婚活サービスは1995年頃、出会い系サイトが登場し、多くの社会的問題を伴いながら、進歩してきた経緯がある。近年はマッチングサービス各社も本人認証を強化するなど、ユーザーが求める「安心感」を向上させてきた。今回のビデオデートも事前に自分が良いと思える人物を選択しやすくなるという安全性をもたらした。

日本でのマッチングアプリのダウンロード数は右肩上がりだ(写真はエウレカより提供)

小野澤さんは「アメリカでは10人に1人がマッチングサービスを使って出会っている。現状日本では、その半分くらいの規模感」と現在の市場について触れ、「今後も確実に市場は伸びていくだろう」と話す。そのためには、オンラインでしか生み出せない出会いの演出や機能の充実、なにより安全性の向上は欠かせない。

ニュースイッチオリジナル
小林健人
小林健人 KobayashiKento 経済部 記者
話を聞いていて、どんどんオフラインとオンラインが近づいているように感じました。 「モテる」人はオフライン、オンラインの違いは関係ないのかもしれません。 機会があれば、オンラインデートにチャレンジしてみてレポートをしたいと思います。

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