【男の妊活】妻のメンタルケアは大丈夫?カウンセラーがアドバイス!
妊娠のしやすさは個人差が大きく、一部の人は妊活期間が長期化しやすく、それに連れて特に女性の心の負担も重くなりがちだ。ロート製薬が毎年公開しているアンケート調査「妊活白書」では、既婚の妊活中の男性の約34%が「パートナーが精神的に不安定になったとき」につらさを感じると回答している。
オンラインで妊活のセミナーやカウンセリングサービスなどを行っているファミワン(東京都渋谷区)。不妊治療の男性特有の悩みや企業の不妊治療に対する姿勢について、石川勇介代表取締役社長に話を聞いた。(聞き手・小林健人)
主にサービスとしては2つです。身体や生活習慣、パートナーとの向き合い方などのセミナーやコラムを通じた「知識の整理」と、カウンセリングなどを通じた「心の整理」です。この2つを組み合わせることで長く妊活をサポートしていくことを念頭に置いています。
男性には主にパートナーとの向き合い方などのセミナーやカウンセリングです。ファミワンのサービスは私自身の経験をもとに作りました。私自身がそうでしたが、男性の不妊治療は特に情報が少なく、誰にも相談することもできず、孤独になりやすい傾向があります。そういったユーザーに有益な情報や用途に合った病院の紹介などをしています。
―男性の悩みの特長は具体的にはどんなものでしょうか。一番多いのはパートナーとの向き合い方です。カウンセリングに寄せられる内容としては、「1人で悩む妻にかける言葉が分からない」や「落ち込む妻に慰めるばかりになってしまう」などの内容が多い印象です。
―そうした悩みを解決するには、夫婦間で決めておいた方がいいことはあるでしょうか。1番は妊活を始める前に、夫婦で方向性を話し合うことだと思います。妊活をいつまで続けるのか、どちらかに原因があった場合手術までするのか、などです。検査してから方向性を決めると、夫婦で意見の食い違いが起こります。そういった食い違いを避けるためにも、あらかじめ方向性を決めておくことが重要です。また、話し合うことで女性が病院に行っても、男性がなかなか病院に行いかないなどのタイムラグをなくせ、効率よく妊活を進めることにつながるはずです。
―時間との闘いでもある妊活において、話し合いをすることで効率化を図ることができるということですね。ところで話し合いをすることであったり、夫婦そろって病院に行くことに年代の差を感じますか?ファミワンのユーザーの話にはなりますが、年齢が若いほど夫婦で一緒に妊活をする傾向が高い印象です。特に近年は「不妊の原因の約半分は男性にある」という意識が浸透してか、行動に移す方が増えました。一方、年齢層が比較的高いほど妊活の知識が不足したり、初動が遅れる傾向にあると感じます。
企業にも求められる社内「妊活文化」の醸成
ところで現在、企業の福利厚生の場でも従業員の妊活を支援することの重要性が増しているという。女性が従業員に占める割合が高まるにつれて、妊活を理由に女性社員が休業や退職を余儀なくされることは企業にとって大きな痛手だ。これまではフレックスタイム制や助成金制度を設ける企業が多かった。近年では企業文化に妊活を浸透させるような取り組みも増えているようだ。
法人向けには主にセミナーの開催や当社のオンライン相談の提供などです。セミナーの内容としては、卵子や精子などの身体についての基本的な話や管理職者向けに妊活の話をしています。企業側としては従業員の満足度を高めるためにはこれまでの補助制度だけでは不十分だと感じ、企業文化として妊活支援を根付かせたいとの考えがあるのではないかと感じています。また、自治体向けにも同様のサービスを提供しています。
―管理者向けのセミナーでは聴講者の反応はいかがでしょうか。先ほど話にあったように捉え方に年齢層の差がありそうですが。考え方の違いは大きいと感じます。管理職者が子どもを持った当時の環境と今から子どもを持つことは全く違う社会環境です。現在は女性でも子どもを持った後も、仕事を続け、キャリアアップを目指すことは珍しいことではなくなりました。
実際、当社のサービスを使ってくれている小田急電鉄での話ですが、各駅の駅長向けにセミナーを行いました。参加した駅長さんからは、「妊活について知らなかったので、今後部下のマネジメントに役立てたい」「自分は妊活をしたことがないので、妊活をしている人が傷ついてしまうような言葉を知れてよかった」などの声が寄せられました。今後も妊活の世代間の意識の違いを埋める活動ができればと考えております。
―米シリコンバレーなどでは従業員に向け、福利厚生で妊活を支援する動きが広がっています。今後日本企業にも同様の動きは広がるでしょうか。間違いなく広がると考えています。例えばLGBTへの支援ではGoogleを先進的な事例として日本でも取り上げられていましたが、今では日本企業にも広がりを見せています。妊活支援も福利厚生の取り組みとして広がっていくのではないかと考えています。我々としてはそのお手伝いをしていきたいです。
医学的エビデンスが重要
―妊活においての情報は氾濫しているように感じます。例えばSNSなどでは「妊活にはこれをやれば良い」などの情報が見受けられます。この辺りの部分をファミワンとしていかに克服していくべきとお考えでしょうか?あくまで妊活のゴールは子どもを持つことです。実際、当社にも妊活を経験した方から「何かお手伝いできることはないか」と声をかけていただくこともあります。しかし、どのような治療が効果があるかは個人差が大きいです。当社としては医学的に効果があるのかどうかを重視しています。そのため個人の経験ではなく、医学的な視点からカウンセリングや情報の提供を行っていきたいと考えています。
不妊治療は個人差が大きいと同時に、新たな技術が次々生まれている。横浜市立大学附属市民総合医療センターの湯村寧医師のもとにもメディアやネットで大量にあふれる情報に判断がつけられなくなって途方に暮れた患者が多く訪れる。湯村医師は、「不妊治療では新しい技術が次々生まれ、根拠が不確実でも医学的に効果があるかのように患者に勧めるケースもある」と懸念する。
新しい技術やサービスの利便性は使っていくべきとしながらも、「製品であれば監修医がいるのか、技術に対して医学的なエビデンスがあるのかなど、確認してから使ってほしい。また、迷った場合は専門医に相談するなど情報の裏付けを意識してほしい」と注意を呼び掛ける。