加熱する「脱炭素」。川重の水素燃焼技術は航空機も視野に

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川重の水素焚きガスタービン発電設備

調達から活用まで準備着々

川崎重工業の水素戦略が新たな段階に入る。今後10年間の経営方針で水素分野の収益化を明確に打ち出し、船舶を建造する坂出工場(香川県坂出市)を液化水素運搬船などの開発や製造拠点として再編する。水素サプライチェーン(供給網)の構築とともに、水素を燃料に使う発電技術の実証も進む。重工各社も拡大を狙う同分野で水素の調達から活用まで網羅する事業体制を確立する。

「世界各国から約50件の水素関連プロジェクトの検討を依頼されている」―。橋本康彦社長は11月の経営方針説明会で“引く手あまた”の状況をこう説明した。国内や豪州に加え、欧州、東南アジアで事業化調査に参画しているという。

川重は10年ほど前から着手した水素分野の技術開発を進めて、収益計画を立てる段階にまでこぎつけた。2030年度(31年3月期)に売上高1200億円、40年度には30年度比2・5倍の同3000億円を目指す。全社の売上高に占める比率は小さいものの、将来の収益の柱に位置付ける。

水素を燃料として使う技術開発が進んでおり、同社はガスタービンでの活用を見据える。数十ミリメートルほどの微小な水素火炎による燃焼技術を用いて水素専焼の実証に成功した。水素発電では窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えるために火炎の高温部に水を噴射するが、「発電効率が下がりコストが上昇してしまう」(西村元彦准執行役員)のがネックだった。川重の同技術によりNOxの排出低減と発電効率を両立する。

また水素ガスタービンを実証している神戸市のポートアイランドで、近隣施設に熱と電気を供給する試験も始めた。発電の安定性や環境負荷の低減効果などを検証する。

二酸化炭素(CO2)を低減する「脱炭素化」に向けて、重工各社による発電技術の開発は熱を帯びている。三菱パワーは米国で水素を利用したガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)向けガスタービンを受注した。IHIはガスタービンで天然ガスとアンモニアを混焼する試験を実施。エネルギー分野のパラダイムシフトへの対応は共通の課題だ。

川重は水素燃焼技術を航空機にも応用する。欧エアバスが水素を燃料に使う方針を打ち出しており、川重も30年までに航空エンジンの燃焼器を対象にした実証を目指す。川重は水素社会の担い手に変わろうとする中で、水素サプライチェーンの実用化への準備を着々と進める。

日刊工業新聞2020年12月23日

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