清水建設と産総研が水素貯蔵装置を都市部に!「ゼロエミッション」で災害に強い街づくり
産業技術総合研究所は清水建設と共同で、水素を蓄えられる合金を利用した水素エネルギーシステムの開発と実証に取り組んでいる。水素吸蔵合金を利用した大型タンクを都市部に設置し、郊外で作った太陽光発電などによる再生可能エネルギーが余った際に水素に変え、郊外から都市部に運ぶというモデルを考えている。温室効果ガスの実質ゼロを目指す「ゼロエミッション」で災害に強い街づくりの実現を目指す。
産総研と清水建設は2016年から水素エネルギーに関する共同研究を始め、水素を貯蔵できる吸蔵合金を開発した。合金への吸蔵で水素の体積を1000分の1に圧縮でき、省スペースでの保存が可能となる。さらに安全面では合金の粉を燃えないように工夫。チタンを主成分とし、レアアース(希土類)は使わず大量生産できるためコストを減らせる。今後開発を進め、現状の材料に比べコストの半減を目指す。
さらに開発した合金で65キログラムと260キログラムの2種類の大型タンクを作製。大気圧下、室温で水素を貯蔵できた。さらに大気圧下、40―50度Cの環境で水素を放出できることも確認した。産総研再生可能エネルギー研究センターの前田哲彦研究チーム長は「燃料電池の排熱で水素を放出できる」と強調する。
さらに19年7月からは郡山市総合地方卸売市場(福島県郡山市)で開発したタンクを含む水素貯蔵装置などの実証を行っている。水素システムと蓄電池を導入した際の二酸化炭素(CO2)の削減量を試算したところ、導入前に比べ53・1%の削減効果があることが分かった。さらに合金タンクへの水素の1時間程度での急速充填に成功している。今後2000キロワット時の水素蓄電設備を清水建設の北陸支店のビルに21年度に設置し、運用を始める計画だ。
前田研究チーム長は「水素をためたタンクでは数週間の保管が可能で、ゆっくりと消費することが求められる災害時などの場面で有効」と水素貯蔵システムに期待している。