川重が初の国産手術支援ロボット量産開始! 30年度に関連事業1000億円へ
川崎重工業は国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)サージカルロボットシステム」の量産を開始した。明石工場(兵庫県明石市)に年数十台を生産できる体制を整えた。ヒノトリに関する事業では2030年度に売上高1000億円を目指しており、生産台数を早期に年100―200台に引き上げる。今後、明石工場だけでは生産体制が不足するため、新工場や新ラインの構築などにも着手する。
ヒノトリは川崎重工業とシスメックスが共同出資するメディカロイド(神戸市中央区)が製造・販売。川崎重工業は開発と生産を担う。ヒノトリは患者を手術する「オペレーションユニット」と医師が操作する「サージョンコックピット」の大きく二つで構成し、オペレーションユニットは4本のアームに内視鏡カメラやロボット鉗子(かんし)が装着・稼働する。8軸のアームは人間の腕サイズで手術中にアーム同士が近くなっても干渉を回避できる。
ヒノトリにおけるオペレーションユニットとサージョンコックピットのマスター・スレーブ制御は、塗装や研削やバリ取りを遠隔操作で行うロボットシステム「サクセサー」にも応用されている。ヒノトリを通じて、産業用ロボットの技術力向上にもつなげる。
川重のロボット事業では10月に医療ロボット総括部を新設。30人規模でスタートしており、自動車や半導体、一般産機に続き、医療向けに力を入れる。手術支援ロボットに加えて、PCR検査を産業用ロボットで高速化・自動化する「PCR検査ロボットシステム」を基軸にしながら医療におけるロボット活用を開拓し、同ビジネスを拡大する。
神戸大はヒノトリを使用し手術成功
神戸大学は14日、川崎重工業とシスメックスの共同出資会社であるメディカロイド(神戸市中央区)が開発した国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を使用した1例目の手術を同日実施し成功したと発表した。
神大病院国際がん医療・研究センター(同)で前立腺がんの手術で利用した。患者は73歳男性。手術時間は約4時間30分で、うちロボットの動きを操作する「サージョンコックピット」で執刀医が操作した時間は約3時間30分だった。
執刀した藤沢正人神戸大学大学院医学研究科長・医学部長は「メディカロイドとともに足かけ6年にわたって開発に注力してきた。新たな医療機器として社会実装できたことに感無量の思いだ」と話した。前立腺がんをはじめ、下腹部の血管や神経が集まっている場所で行う手術は難易度が高い。低侵襲で患者の負担を軽減できる手術支援ロボットによる外科手術の導入が広がっている。