JFEスチールが打ち出した野心的なCO2削減目標、達成のための二つの武器

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JFEスチール福山地区のフェロコークスの実証設備

JFEスチールは開発中の技術と既存技術を活用し、製銑・製鋼プロセスの環境負荷を低減する。低品位の石炭・鉄鉱石を使う高炉原料「フェロコークス」の国家プロジェクトを主導し、早期実用化を目指す。不純物を取り除く転炉では、鉄スクラップを多く使える設備を全4地区で稼働する。これら“合わせ技”によりコストの大幅増を抑えつつ、2030年度に二酸化炭素(CO2)排出量で13年度比20%以上の削減を目指す。(編集委員・山中久仁昭)

【野心的な目標】

CO220%削減と、その先のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の差し引きゼロ)の50年以降の実現―。JFEスチールが9月に打ち出した目標には「野心的」との評価もある。

総量での削減に加え、他社のように追加策を講じない場合の量(BAU)の比較ではないからだ。鋼材生産は現状、CO2の排出なくして行えない。同社は「手持ちのいくつかの武器を使ってクリアする」(地球環境担当の手塚宏之専門主監)と決意は固い。その武器が、フェロコークスとスクラップ活用だ。

フェロコークスは製銑工程で使う安価な原料。約3割含まれる金属鉄の触媒効果で還元(酸素除去)効率が高まり、高品位炭由来のコークスを大幅に減らせるという。CO2と消費エネルギーの約10%削減を見込む。

【早期に商用化】

開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がJFEスチールなど鉄鋼3社に委託。23年にも技術を確立して、早期商用化を目指す。同社の福山地区(広島県福山市)に、商用化想定の約5分の1に相当する日産300トンの製造設備を建設し、10月に実証を始めた。建設費は約150億円。

今後実用化されれば福山だけであと数基必要になる。日本の鉄鋼業界は原料をほぼ全量輸入し、低廉と長期の安定調達が重要な課題であり、経済合理性にかなう技術といえる。

一方、鉄スクラップの活用拡大には、転炉型脱リン工程を駆使する。高炉から出た溶銑は転炉で、炭素やリン、ケイ素など不純物を取り除き強靭(きょうじん)な鋼にする。その過程で入れる鉄スクラップの比率を高め、CO2排出を減らす。

従来難しかった温度制御を処理の順序や手法の改良で容易にし、スクラップ投入を増やせる。同設備は福山地区、京浜地区(川崎市川崎区)に導入済みで、千葉地区(千葉市中央区)で21年春、倉敷地区(岡山県倉敷市)の第2製鋼工場で同5月にも操業開始予定。投資額は1基が約105億円。もともと高級鋼の需要増に対応する設備だが、処理効率が高く低炭素化に寄与する。

【技術積み上げ】

二つの技術開発・導入には、数年以上前から取り組んできた。高い目標の達成には人工知能(AI)などITも総動員する考えだ。日本製鉄などとは高炉内の水素還元技術「COURSE50」プロジェクトを進めるが、水素の低廉・大量調達には時間を要するとの認識を持つ。「コストの大幅増にならない技術を追究し、日々積み上げるのがJFE流」(手塚専門主監)としている。

日刊工業新聞2020年11月20日

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