東芝が目指すは「技術のデパート」。脱炭素化に向けて総合力で勝負
再生可能エネに重点投資
東芝は脱炭素社会の実現に向けて“技術のデパート”を目指す。太陽光や水力、地熱などの再生可能エネルギーのほか、エネルギー調整、二酸化炭素(CO2)分離回収分野において世界でも存在感は際立つ。今後も再生可能エネ関連に重点投資し、脱炭素化の流れを捉えて技術の総合力で事業拡大を図る。(編集委員・鈴木岳志)
東芝の最高技術責任者(CTO)である石井秀明執行役常務は3日の技術戦略説明会で「長年にわたるインフラ・エネルギー事業経験で培った技術ノウハウを生かし、世界が直面している課題の解決に努める」と宣言した。2020年度の再生可能エネ関連の研究開発費は売上高対比で約10%にあたる170億円を投じる。21年度以降はさらに手厚く配分する方針だ。
メガソーラー設置シェアや水力発電設備は国内トップであり、可変速揚水発電所や地熱発電タービンは世界トップ級の導入実績がある。独自のリチウムイオン二次電池(LIB)「SCiB」も自動車への採用が順調に増えている。「『つくる』『おくる』『ためる』『かしこくつかう』のエネルギーチェーンを通じて広い分野で多くの関連技術を有しており、その全体で脱炭素化を推進する」と石井常務は意気込む。
次世代技術でも世界の先頭集団を走る。ペロブスカイト薄膜太陽電池や水系LIB、CO2から化学品・ジェット燃料を製造する資源化技術などが期待される。20年には福岡県大牟田市のバイオマス発電所でCO2分離回収の大型実証設備を稼働させた。火力発電所由来のCO2の半分以上を回収する設備は日本初だという。
一方、東芝はインフラサービス企業を目指しており、発電技術などに立脚しながらもサービスで稼ぐビジネスモデルを主軸に据える。25年度には年間の研究開発費全体に占めるインフラサービス・データサービスの比率を19年度比13ポイント増の36%まで引き上げる計画。脱炭素関連はもちろんのこと、インフラを支えるプラント運転自動化やロボット、人工知能(AI)、故障予知などに注力する。
「東芝ならではのインフラサービス・データサービスを創出し、顧客やパートナーとともに社会課題の解決に貢献する」(石井常務)とサービスを含む技術の総合力で脱炭素化に挑む。
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