「脱炭素」で加速する電池調達競争、エンビジョンAESC幹部が生産戦略を語る

勝雅彦副社長インタビュー

  • 0
  • 5
エンビジョンAESC公式サイト

車載用電池への関心が一段と集まっている。世界的に脱炭素化が加速し、日本政府も2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)を表明した。自動車は今までのガソリン車から、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)といった電動車への転換が進む。カギとなるのが電動車の駆動を支える電池。完成車メーカーによる電池の調達競争も激しくなりそうだ。車載用電池を手がけるエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)で生産技術を担当する勝雅彦副社長に今後の生産体制について聞いた。

―世界で脱炭素化の目標設定が相次いでいます。

「車載用電池の需要は当然高まる。英国、カナダなどはガソリン車やディーゼル車への規制を前倒しした。二酸化炭素(CO2)の排出削減といった環境対応で自動車の役割は大きい。純粋に化石燃料で動く車から、EVやHV、プラグインハイブリッド車(PHV)に移行する。これらのうち、どのタイプでも電池は必要だ」

「車載用電池の需要予測は調査会社によって異なるが、19年は約120ギガワット時(ギガは10億)、25年は600ギガワット時、30年は1700ギガワット時ぐらい。読み切れない数字ではあるが、急激な拡大が期待される。同時に電池の価値も高まる」

「中国や欧州の工場の生産拡大が必要だ。当社は設備や保守などを徹底的に標準化するのが特徴。将来の事業展開を容易にするためだ。ローカルではなく、世界各拠点のグローバルな標準化で旺盛な電池需要に対応する」

―欧州では電池メーカーの工場新設が進みます。

「当社の英国工場の拡張と合わせて欧州の大陸側にも新工場の設置を検討する。英国の欧州連合(EU)離脱のリスクを避けるのと、大陸側の顧客に電池を供給しやすくするためだ。欧州の工場運営で重視するのは『バリューチェーン』。単に電池を作るのではなく、材料をどう調達するか、そして電池需要の拡大に対して使い終わった電池をどうリサイクルするかといった視点だ。原材料を調達し、当社が電池を作り、リサイクル事業をするという中で、どこかと組むことがあれば良いなと思っている」

「環境に配慮した電池工場にするため、新拠点は再生可能エネルギーが使える場所を念頭に置いている。再エネの利用も一つの電池の価値だ」

―中国工場に関して23年には年産20ギガワット時まで高める計画です。

「20ギガワット時という生産能力はそんなに高くない。他社はその何十倍を計画するなど鼻息が荒い。需要動向を見ても中国工場の生産能力は過大ではなく、むしろ少ないぐらいだ。しかし、計画変更の可能性はあるが、現時点では20ギガワット時で進める。確実にビジネスを進めることが大事で、中国一拠点だけでリスクは取らない」

*取材はオンラインで実施。写真はエンビジョンAESC提供

【記者の目/欧州で新工場建設ラッシュ】 車載用電池の投資が欧州で活発になってきた。中国や韓国、さらに欧州の電池メーカーを中心に新工場が増えていく。エンビジョンAESCもEU域内に新しく生産拠点を設けて電池需要の取り込みを狙う。一方、日本国内も既存工場の拡張余地がないことから新工場を立ち上げる予定だ。電池メーカー各社は“脱ガソリン車”の風を捉えられるように供給網を広げている。(日下宗大)

日刊工業新聞2020年12月21日

関連する記事はこちら

特集