トヨタなどがネオジム使用量5割減の磁石部材開発、中国依存リスク減らす
トヨタ自動車と大同特殊鋼、高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)は、ネオジムの使用量を従来比2割から5割減らせるネオジム磁石部材を開発した。車載用モーターに部材として供給できるようになり、次世代モーターの設計で使える。ネオジム磁石は最強の磁石で、自動車やロボットなどの大出力モーターに使われる。自動車の電動化が進むと、膨大な量のネオジムが必要なため、新磁石部材の希土類(レアアース)の使用量削減が求められていた。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で開発した。同事業でトヨタはネオジムを減らしても性能を維持した省ネオジム磁石と、ネオジムの量は一定で性能を2倍に引きあげる超ネオジム磁石の2種類の磁石の開発に取り組んだ。18年に素材としての性能を確かめ、今般モーター用の部材に仕上げてサンプル供給を始めた。
材料を溶かしてから急冷し、温度変化で結晶組織を微細化する。この材料を粉末化して焼結、熱間成形して長さ5センチメートル程度の部材にした。この熱間成形の圧力で結晶が滑りながらつぶされ、幅250ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の扁平(へんぺい)な形になる。さらにネオジムを含浸させ、結晶粒の外周はネオジムが濃く、結晶粒の内部はネオジムが薄い微細構造を作った。この構造が保磁力を高め、外部から強い力がかかっても負けない磁石になる。
省ネオジム磁石と超ネオジム磁石の間の探査空間を面的にデータを集めたため、ネオジム含有量や使用温度に合わせた組成を選べる。従来の磁石部材から2割から5割のネオジムの使用量を減らせる。エアコンや車載用、産業用ロボなど、用途ごとに費用対効果のある磁石を提案できる。
ネオジムは中国など供給国が偏っており、輸出規制などによる供給リスクがある。ネオジムの使用量を減らすことで、こうしたリスク軽減にもつながる。