「モビリティーカンパニー」への脱却急ぐトヨタ。通信大手3社を押さえたワケ
トヨタ自動車は2020年、「モビリティーカンパニー」へのフルモデルチェンジに向けたギアを一段、引き上げた。その中身は人やモノ、インフラをつなぐスマートシティーへの投資だ。
年が明けて早々に自社工場跡地を活用したスマートシティー実証都市「ウーブン・シティ」構想を発表。その戦略をより強固にすべく、3月にはNTTと相互に約2000億円ずつを出資する資本提携を発表した。第5世代通信(5G)やコネクテッドカー(つながる車)を軸に、次世代都市のプラットフォームづくりを目指す。
トヨタの豊田章男社長は「あらゆるモノやサービスが情報でつながる時代になり、クルマ単体でなく街や社会全体で考える『コネクテッド・シティー』の発想が重要だ」と断言する。クルマの価値がハードウエアからソフトウエアにシフトする中、クルマは都市機能のサービスを提供する構成要素の一つだ、という考えだ。
トヨタはKDDIの大株主で、21年1月末めどに追加出資も決めた。ソフトバンクとも提携しており、国内大手通信3社を押さえた格好だ。インフラとしての通信基盤に加え、コネクテッドカーやモノから情報を収集し、新たなモビリティサービスにつなげる。全方位で取り組もうとする狙いが透ける。
戦略強化に向け、自動運転ソフトウエアなどを手がけるトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI―AD)の再編も発表。21年1月、ウーブン・シティをはじめとする街づくりプロジェクトを手がける事業会社と、自動運転ソフトなどを手がける事業会社、投資ファンドの3事業体を傘下に抱える持ち株会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」を設立する。豊田社長自身も私財を投じて設立する力の入れようだ。
ウーブン・シティの着工日は21年2月23日の予定。スマートシティーの構成に必要な最小単位を磨き上げ、パッケージとしてグローバル展開につなげる取り組みが本格始動する。