1マイクロメートルを操る宇都宮の精密加工メーカー、人材育成への探求心
城北工範製作所(宇都宮市)は、1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位の真直度と真円度を保つ金属やセラミックスの精密加工を得意とする。近年は部品に加え、産業機械や医療分野などユニット部品の受注が拡大。受注案件が多様化する中、2016年に始めた改善活動を通じて業務効率化や不良率低減などの成果を挙げている。塚原社長に活動の現状と展望を聞いた。
―製品が多様化する中で、業務効率化をどう維持していますか。
「ユニット部品は設計開発から関わることが多く、案件に応じて専属のプロジェクトチームを組成する。通常の部品加工と掛け持ちだと進捗(しんちょく)管理が複雑になり効率は低下する。一つの案件に集中して取り組み、直接・間接部門をまたいで進展を共有する。問題が生じても早い段階で対処でき、納期遅れはほとんど発生していない」
―改善活動に注力しています。
「全社の品質目標を部門別の8班に振り分け、定期的に改善点を洗い出す。従業員が集まる月1回の発表会に加え、班ごとの課題と改善事例をまとめた資料を掲示し、取り組み内容を共有する。社内投票で半年ごとに優秀事例を表彰している」
―どのような成果がみられましたか。
「各工程の効率化に加え、社内コミュニケーションの円滑化に寄与している。事例報告は部門を超えた情報共有を促進し、活動を始めてから社内不良の発生を毎年約15%低減できた。特に精密さが求められる加工では、材料のクセや加工のこつなど図面や手順書に表し切れない特徴を把握できるかが歩留まりに影響する。例えば加工品を次工程に渡す時、作業者がひと言アドバイスを添えるだけでも不良抑制につながる」
―人材育成の取り組みはいかがですか。
「国の教育訓練機関や県などが主催する研修への参加を全従業員に推奨している。知識や技能の向上のほか、他社の従業員と交流するきっかけになる。当社では事業に必要なスキルを50項目に明文化し、力量把握と目標設定に取り入れた。従業員に求められる項目を抽出し、外部の研修予定と照らし合わせ、半年ごとに研修計画を立てる。外部研修は若手から管理職まで積極的に参加している」
ポイント/設計部門、人材育成を
強みの精密加工技術を支えるのは長年のノウハウと技術者の技量の高さだ。社内活動を通じてコミュニケーションを活性化し、現場のポテンシャルを引き出してきた。城北工範製作所ではここ4―5年で設備投資、生産改善、3S(整理・整頓・清掃)活動を並行して進め、足場は固まりつつある。次の段階は「人材採用・育成を進め、特に設計部門を強化する」(塚原社長)方針で、さらなる成長を見据えてヒトづくりに挑もうとしている。