人材育成や金型の設計製図、モノづくりの現場で輝く現代の名工たち

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アイシン精機の尾﨑三広さん(写真右)

電子計算機組立・調整工 アイシン精機・尾﨑三広氏 工場で喜ばれる人材育成

アイシン精機の尾﨑三広さんは企業内学校「アイシン高等学園」で約30年間、モノづくり人材の育成に尽力してきた。指導員だけでなく、電子機器組み立て職種で技能五輪大会に挑む選手のコーチなども務めた。延べ1700人以上の卒業生がアイシングループ各社の技能者として羽ばたいていった。

「技能五輪はワンランクレベルが上がる。選手を指導するには自分の技能を高めないといけない」。電子機器は変化のスピードが速い。尾﨑さんは求められる技能の研究や情報収集に注力してきた。

例えば電子機器でのハンダ付け。電子機器は小さな基板に多くの部品が収まる。ハンダ付けは熱を加えることでさまざまな変化をするため、きちんとハンダがつかないと機器がショートして誤作動を起こす。そうならないように適量でできるにはどうしたらよいかなどを研究してきた。技能五輪を経験した卒業者が「監督者になって頑張っている姿を見るとやりがいを感じる」と目を細める。

アイシン精機は11月に開催した技能五輪全国大会のメカトロニクス職種で14年ぶりに金賞を獲得した。「一緒に頑張ってきたコーチもいるし、自分のことのようにうれしい」。

2013年から金型を製作する工機工場(愛知県西尾市)で人材育成を担う。尾﨑さんは「不足している教育を明確にしていきながら、経験を生かして工場で喜ばれる人材を育てたい」と意欲が尽きることはない。(名古屋・山岸渉)

製図工・エムエス製作所 江口博保氏 期待を上回る設計追求

自動車部品のウエザーストリップなどを成形するゴム成形金型が主力のエムエス製作所(愛知県清須市)。同社初の現代の名工となった江口博保さんは金型の設計、製図を約30年間手がけてきた。

エムエス製作所の江口博保さん

「常に顧客から学び、顧客の期待を上回る設計を目指してきた」と振り返る。印象に残っている設計は、ウエザーストリップの成形用「スタックモールド金型」。車のフロントドア、リアドアにそれぞれついている三角形の部分、フィックスウインドーとクオーターウインドーの窓枠を、品質を落とさず効率良く成形する金型システムを確立した。

従来、縦に並べていた金型を表裏に配置し蛇腹のように開くスタックモールド金型は成形機の小型化につながる。成形品を取り出す時の高低差もなく作業者にもやさしい。金型の改善で主要取引先から会社が表彰されたことについて「恩返しができた」と喜ぶ。

自己研さんを怠ることなく、職業訓練指導員免許(機械科)や国家技能検定は特級2職種と1級3職種を取得。愛知県の技能検定委員を10年以上勤めた。日本金型工業会の金型マスターと上位称号のシニア金型マスターにも認定されている。

「1人で設計ができるまでに10年、自分の設計ができるまでに20年、お客さんと話ができるようになるまでには30年」。金型の世界は奥が深い。後進の若者には「その日の1個をやり続けていくことが未来につながる」とエールを送る。(名古屋・田中弥生)

日刊工業新聞2020年12月2日

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