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ダンロップの低燃費タイヤ、カギを握る水素添加ポリマーの採用に至ったAI画像診断

住友ゴム、協業と最新技術を生かす
ダンロップの低燃費タイヤ、カギを握る水素添加ポリマーの採用に至ったAI画像診断

ダンロップ「エナセーブ NEXTⅢ 」公式動画より

住友ゴム工業のダンロップ「エナセーブ NEXTIII」は、トレッドゴムに水素添加ポリマーを採用し、従来製品と比べ耐摩耗性能を20%向上し、ウエットグリップ性

能の低下を半減させた。バイオマス材料のセルロースナノファイバー(CNF)を使用することで、環境負荷を低減させた。最新技術を投入した同タイヤをダンロップブランドの旗艦低燃費タイヤと位置付ける。

木を由来とするCNFは水とは相性はよいが、石油系のゴムとは相性が悪く「技術的な課題が10年以上前からあった」(佐藤大輔材料開発本部材料企画部課長)という。CNFをタイヤに採用できる技術の基礎研究を経て、日本製紙と三菱ケミカルと共同で開発した。環境負荷だけではなく、CNFの繊維をタイヤの回転方向に配列することで、タイヤの周方向は堅く強度を高め、径方向は柔らかさを兼ね備えた。

水素添加ポリマーは素材メーカーのJSRと共同で開発した。同ポリマーは分子の強い結合力と、切れても戻る結合という特性を持つ。従来製品に比べ、2万キロメートル走行後のウエットグリップ低下を10%から5%に半減し、耐摩耗性能は20%向上した。

「他社との協業がなければ(同タイヤは)生まれなかった」と材料開発本部材料企画部の上坂憲市部長は振り返る。さらに「企業と企業で新しいイノベーションを起こしていかないと、新しい製品が生まれてこない時代になっている」と強調する。

また「人工知能(AI)による画像診断技術をタイヤ材料開発に応用した」(上坂部長)。画像診断の結果、走行による摩耗や外部刺激によって、タイヤのウエットグリップ性能に寄与するゴム内部構造が変化していることが分かった。スーパーコンピューターなどを活用し、ゴム内部構造を解析。物理・化学的な変化を引き起こすメカノケミカル反応が進行していることを確認した。同反応を抑制する水素添加ポリマーの採用に至った。

開発した水素添加ポリマーは3月に発売した「VEURO VE304」にも採用した。今回の技術を汎用タイヤへの展開を進めていく。

(取材・鎌田正雄)
日刊工業新聞2020年12月8日

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