京セラ、NTTデータ、セイコーウォッチも! 配信スタジオが企業に広がるワケ
コロナ禍でオンラインイベントが増える中、企業がインターネット配信用のスタジオを本社内に新設する動きが広がっている。京セラは製品レチャー、記者会見などを配信する常設スタジオの運用を11日に開始。NTTデータやセイコーウオッチ(東京都中央区)もスタジオを整備した。コロナ禍収束後もバーチャルと対面両方を活用した新たな技術提案に活用する考え。社外向け広報のニューノーマル(新常態)化も進みそうだ。
京セラは、既存の小会議室二つを合わせてスタジオに改装した。操作室を含めた広さは75平方メートル。4K対応カメラ1台のほか、音響・照明設備、専用のネット回線を導入した。11日に予定する機械工具事業の切削加工ユーザー向けのオンラインセミナーを皮切りに運用を始める。
同社はコロナ禍によりウェブ会議システムを活用した製品提案を急速に進めたが「従来、対面では見てもらえなかった(顧客の)上層部にも、手軽に見ていただけた」(谷本秀夫社長)と一定の手応えを得た。
一方で、京セラの製品は部品やモジュールなど最終製品でない場合が多く、より高精細なカメラで鮮明に写し、ユーザーに提案する必要があった。
今後は同スタジオから国内外に配信し、より多くのユーザーとつながりを持つ狙いもある。製品レクチャーに加え、オンラインセミナー、社内研修、記者会見などの用途に活用する予定。
NTTデータがこのほど開設したスタジオは、社内向けの広報活動に活用していた映像撮影・編集スペースを改装した。広さは約30平方メートル。カメラや配信制御のための機材などは2台ずつ用意。照明設備や、講演者が投影画面をリアルタイムで確認できるモニターも設置した。広報部を中心に数カ月かけてスタジオの設計や機材の手配を進めたという。
自社の最新の技術動向や事例を紹介するイベント「テクノロジーカンファレンス」で44講演を同スタジオからライブ配信した。今後はイベント配信だけでなく、営業用の資料として使う動画の制作も広報部で担う考えだ。
このほか、セイコーウオッチやアイ・オー・データ機器なども本社内にスタジオを設置している。リアルな展示会の中止が相次ぐ中、質の高い情報発信でコロナ禍の影響を受けた自社製品の販売回復につなげる考え。第5世代通信(5G)の普及に伴う拡張現実(AR)、仮想現実(VR)を取り入れたコンテンツ配信も増えるとみられる。