カメラ各社がスポーツ映像分析にフォーカス、有望な成長領域に独自技術で挑む

  • 0
  • 5
ソニーとヤクルトが明治神宮野球場(東京都新宿区)で始めた投球・打球の解析(イメージ=ソニー提供)

姿勢・球の変化、高精度捕捉

カメラ大手がスポーツの映像分析技術を磨いている。世界でリードしてきた光学技術や画像処理技術は、コロナ禍で生じた非対面・非接触というニューノーマル(新常態)に対応しながら、選手の技能向上やケガの防止などに貢献する情報を取得するのに大いに役立つ。デジタルカメラ市場の縮小で新規事業の創出が欠かせない中、スポーツビジネスは有望な成長領域だ。

ソニーの強みは傘下の英ホークアイとの連携だ。ホークアイは映像からボールの軌道を高精度に捉える技術を持ち、テニスのイン・アウト判定やサッカーのゴール判定などで有名だが、他にも野球のプレー分析にも取り組む。国内ではプロ野球の東京ヤクルトスワローズと実証実験を行っている。

球場内のカメラで球と選手の骨格の位置情報を取得、姿勢や球の変化などを捉える。米大リーグ機構(MLB)にも採用された強みは「レーダー以上の正確性と一貫したソリューション」(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズスポーツ事業室の山本太郎担当部長)。画像解析技術だけでなく、撮影機材や放送支援システムなどでもソニーとの相乗効果がある。

ニコンは測距カメラで捉えた被写体の動きから、高精度な3次元(3D)データを生成する姿勢解析システムを開発中。用途次第では1、2台のカメラだけで撮影が済み、さまざまな撮り方や使い方に柔軟に対応する。

取得できるデータも多彩で、競技力の向上や健康増進、伝統芸能の記録など想定する用途は幅広い。次世代プロジェクト本部の中川源洋氏は「(開発成果を)カメラに仕上げられることや、光学技術でアプリケーション(応用ソフト)を最適化できる点は強み」と語る。

キヤノンは複数の映像を基にカメラアングルを自由に移動できる「自由視点映像」を生成する技術の活用を進めている。これまでラグビーや音楽ライブなどの映像コンテンツ制作を手がけてきたが、他の活用例としてプレー分析も視野に入る。

イメージソリューション事業本部の福島久史SV事業推進センター所長は「競技データの取得や分析は普通の撮影だけでカバーできない部分もある。ケガの防止や要因特定などで自由視点映像の要望はある」と語る。

世界市場、22年4000億円

米国の調査会社ケネスリサーチによると、スポーツ分析の世界市場は2016―22年に年平均40.1%成長し、22年の世界市場が約39億7000万ドル(約4127億円)に達する見込み。スポーツの映像解析は競技力の向上が主な目的だが、コロナ禍では選手と指導者の身体的な距離の確保にも役立ちそうだ。競技力の向上にもニューノーマルへの対応が求められる中で、離れた場所から動きを高精度に捉える技術から目が離せない。

日刊工業新聞2020年12月1日

関連する記事はこちら

特集