ソニーのイメージセンサー新工場、ファーウェイ向けの落ち込みをiPhoneでカバー
21年秋に稼働へ
ソニーが、長崎県諫早市に建設中の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサー製造棟の稼働を2021年秋に始める計画が分かった。米中貿易摩擦により中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)向け需要は落ち込むが、米アップルなどからの受注増で補えるめどが立った。ほぼ当初の計画通りに進行し、イメージセンサー世界最大手として積極投資のブレーキは踏まない。
ソニーは21年4月から長崎のイメージセンサー既存工場の隣接地に建設している新棟への製造装置の搬入を始める。その後は半年程度かけて立ち上げ作業を行い、同10月めどの稼働開始を目指す。
大口顧客だったファーウェイは米トランプ政権の制裁により半導体の調達が難しくなり、スマートフォンなどの生産に大きな支障が出ている。ソニーは米商務省へ輸出許可を申請したが、ファーウェイのスマホ向け需要自体が減少する中で稼ぎ頭のイメージセンサー事業へのマイナス影響が懸念されていた。
ただ、現状はアップルや他の中国スマホメーカーからの引き合いが強く、従来ファーウェイ向けだった供給能力の奪い合いになっているようだ。一時期は新棟の稼働を延期する検討もしたが、良好な受注状況を鑑みてほぼ当初の計画通りで稼働させる方針だ。
半導体工場はまず建屋を作った上で、需要に応じて製造設備を順次導入していくのが一般的だ。ソニーも新棟に予定した全ての設備搬入を終える完工時期は遅らせる可能性がある。米中対立の行方や新型コロナウイルス感染症の収束は見通せず、イメージセンサーで約50%の市場シェアを握るトップメーカーとして需給バランスに注意を払う必要がある。
日刊工業新聞2020年10月27日