富士通とNECが「DX成長」へ舵、試される経営陣の覚悟
新成長へと舵(かじ)を切る富士通とNEC。両社は客先のデジタル変革(DX)推進のパートナーとなるべく、DXによる価値創造とともに自らの経営変革を急ピッチで進めている。2020年度の折り返しとなる4―9月期決算発表から、それぞれが描く成長シナリオを読み解く。(取材=編集委員・斉藤実)
21年3月期連結業績予想によると、富士通は営業利益が2120億円、営業利益率が5・8%、NECは同1500億円、同5・0%を見込む。両社とも営業利益率5%台で足場を固め、21年度以降の成長戦略につなげる考え。20年4―9月期決算ではその覚悟を示す目標や施策が注目された。
富士通はDXやモダナイゼーション(システムの近代化)を中心とする「フォー・グロース」と呼ぶ成長領域と、システムの保守・運用や製品提供などの従来型IT領域「フォー・スタビリティ」の業績について、初めて明らかにした。グロース(成長)とスタビリティー(安定性)の二つの領域の意義については、時田隆仁社長が7月に表明していた。
20年4―9月期決算では、収益の源泉を担うテクノロジーソリューション部門の内訳として、グロース領域とスタビリティ領域の業績を開示。これによると、グロース領域の売上高は前年同期比5%増の4591億円、従来型ITは同12%減の9183億円だった。グロース領域は「22年度に売上高1兆3000億円」(時田社長)が目標だ。
テクノロジーソリューション部門は売上高の8割以上を占め、富士通が目指す「あるべき姿」そのものであり、22年度に営業利益率10%以上を目標に据える。その実現に向けて、グロース領域をけん引役に富士通がどう進化を遂げるかが今後の注目点となりそうだ。
NECにとっての最重要課題は、3カ年の中期経営計画の最終年度である21年3月期連結業績予想を達成することに他ならない。
変動要因はコロナ禍によるマイナスの影響。これを「経費節減とニューノーマル(新常態)需要の獲得」の半々でマイナス分を相殺する方針だったが、コロナ禍の影響が営業利益で想定よりも150億円悪化する見通しとなり、今回、てこ入れに乗り出した。まずは製造拠点としての役割が縮小していた相模原事業場(相模原市中央区)の土地を売却し、21年3月期に営業利益160億円として計上することを決めた。
中計達成は新野(隆社長)体制の集大成であり、20年度の後半戦はまさに正念場だが、数字の帳尻合わせでは意味がない。「短期利益を最大化しようとすると、長期利益を損なう」と指摘するのは財務担当の森田隆之副社長。「短期目標の達成に向けて、研究開発費などを削れば来期以降の利益を先食いするだけで先行きがない」と語る。策定中の21年度以降の新中計を踏まえ、21年3月期をどう着地させるのか。新野社長、森田副社長をはじめ経営陣の覚悟が試される。