JAXAが宇宙研究特化のスパコン実装! NASAを超える計算能力とは?
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、航空宇宙研究に特化したスーパーコンピューター(スパコン)システム「JSS3」を1日から本格運用する。約6年ぶりに入れ替え、従来機比でメーンシステムの性能が約5・5倍向上し、機械学習への適応や24時間365日無停止運用ができる。2021年度に打ち上げ延期した大型基幹ロケット「H3」のエンジン燃焼時のシミュレーションなどにも使われる見込み。
高性能計算に関する国際会議「SC20」で発表されたスパコン性能ランキングのTOP500では世界19位、国内では3位の性能を持つと評価され、現状では米航空宇宙局(NASA)のスパコンを超える計算処理能力を持つ。他分野と比べ扱う計算量が多い航空宇宙分野の研究での効率化が期待できる。
JSS3のメーン装置は調布航空宇宙センター(東京都調布市)に設置。主要計算システムの理論演算性能は19・4ペタフロップス(ペタは1000兆、フロップスは浮動小数点演算能力)を見込む。汎用計算システムはさまざまな計算に対応するために計算処理装置を4種類に増やした。計算結果を画像や動画にする「可視化」や深層学習・人工知能(AI)を使った計算などに対応する。筑波宇宙センター(茨城県つくば市)の汎用計算システムと連携し、24時間365日継続して運用する「無停止運用システム」を実現する。
H3の研究開発にも使われる見込みで、延期の原因となったエンジン燃焼試験時の課題解決につなげる。JSS3は21年2月末まで従来機と並行運用し、同年3月から単独での運用を始める予定。
日刊工業新聞2020年12月1日