帰還まで2週間の「はやぶさ2」。JAXA所長「タッチダウン技術は月探査に生かせる」

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エントリーカプセルを放出する「はやぶさ2」のイメージ図(池下章裕氏提供)

JAXA宇宙科学研究所所長・国中均氏に聞く

小惑星探査機「はやぶさ2(Hayabusa2)」の地球帰還まであと約2週間。初代「はやぶさ」の時にはトラブルが多かったが、はやぶさ2はミスなく運用やミッションを成功させ続けてきた。小惑星「リュウグウ」で採取したとみられる試料が入ったカプセルを地球に投下させる最も重要であろうミッションが目前に迫る。初代はやぶさと、はやぶさ2の開発や運用に携わった宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の国中均所長に話を聞いた。

―はやぶさ2の地球帰還が目前です。

「これまで日本が開発し運用した衛星や探査機は、途中で不具合が起きていることが多い。初代はやぶさやX線天文衛星『ひとみ』、金星探査機『あかつき』など決して運用が簡単ではなく不安が多かった。はやぶさ2は予定通りにここまで順調に進んでいる。全て100点満点で帰還ミッションを終えてほしい」

―はやぶさ2の開発に携わりました。

「はやぶさ2を構成する部品は、国産でまかないきれない分を海外産に頼っている。だが開発時に海外の製品に欠陥が見られ、何度もやりとりを重ねて部品を調達した。納期に間に合い、準備完了のスイッチを押せて良かったと思う」

―初代はやぶさとはやぶさ2の一番の違いは何ですか。

「初代はやぶさでは自分が担当する工程しか認識せず、全体を俯瞰(ふかん)していない研究者がほとんどだった。全体を理解していたのは川口淳一郎プロジェクトマネージャ(現JAXA宇宙科学研究所特任教授)だけだっただろう。はやぶさ2ではミッションに関わる全ての人に全体像を伝え、細かいトラブルなども全員が共有している。JAXA内だけでなく民間企業の研究者にも全て共有していることが大きな違いだろう」

―はやぶさ2は地球帰還後に他の惑星に向かいます。

「これまでは予定通り計画を進めるためにミッションの時間を守って運用してきた。延長ミッションはこれまでよりも期間が長い。イオンエンジンの研究者として、より運転時間を延ばし宇宙空間でのイオンエンジンの耐久性を知りたい」

―はやぶさ2で培った技術は、今後の宇宙開発に生かせますか。

「はやぶさ2が行った決まった場所にピンポイントでタッチダウン(着陸)する技術は、今後の月探査などに生かせる。月はリュウグウよりも重力が大きいため、はやぶさ2で行った着陸よりも難しい。そのため、はやぶさ2の着陸技術をそのまま生かすことはできない。だが、はやぶさ2で確立できた基礎技術を新しい探査機に組み込んで応用することで、月などの重力の大きな惑星でも着陸できるだろう」

―はやぶさ2の地球帰還を多くの人が期待しています。

「一生懸命大事に育ててきたはやぶさ2が宇宙を縦横無尽に活動してきて、もう少しで地球に帰還する。無事カプセルを回収し、カプセルとリュウグウの試料を多くの人に見せたい。試料からきっと太陽系の歴史の断片が見える。試料の分析結果に期待してほしい。引き続き、応援してほしい」

JAXA宇宙科学研究所の国中均所長
【記者の目/ドラマないことがドラマ】

はやぶさ2は初代はやぶさと比べると、ドラマがないと言われるほどミッションが順調に進んでいる。だが順調の裏には、はやぶさ2の開発や運用に関わる全ての人たちが情報を共有しながらワンチームで進めた結果が潜んでいる。全てのミッションが順調に進んでいることこそが、はやぶさ2の一番のドラマだろう。(飯田真美子)

日刊工業新聞2020年11月24日

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