日本の電機メーカーの源流は造船だった!乗り物という“小宇宙"を作る見えない技術力

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電機メーカーの最新技術が結集した新型新幹線「N700S」

あまり知られていないが、日本の電機メーカーの源流のひとつに造船がある。代表的な例は、官営長崎造船所の払い下げを受けた旧・三菱造船の電機工場が独立した三菱電機だ。他にも、造船に根っ子を持つ企業がいくつかある。

なぜフネなのか。それは狭い船内に多様な人間生活が集約されているからである。船内には照明が欠かせないし、風呂やトイレなど給排水や吸排気をする各種ポンプも必要。食事を作るのも直火の煮炊きは厳禁で、早くから電気調理が取り入れられた。

冷蔵庫も長期航海用によく使われ、第2次大戦中の米海軍には前線の将兵にアイスクリームを届ける専用船があったという。もちろん、こうした機器に電気を供給する発電機も搭載している。

電気・ガス・水道というライフラインを街全体に敷設するのは大変な手間だ。船なら限られたスペースだし、設計も全体を見渡せる。電気機器が船舶用から発展したことは理屈の上でも納得できる。

      

現代では船舶用に限らず、多くの「乗り物用電気機器」が使われている。自動車用や航空機用、そして列車・電車用。照明もエアコンも必要だし、トイレや調理場を設けることもある。もちろん乗り物としての推進力と、そのコントロールにも電気が多く使われる。

乗り物の中は、いわば社会から切り離された「小宇宙」だ。限られた空間とエネルギーの制約の中で、乗った人に快適な環境を提供しなければならない。それには工夫がいる。

発電機を例にすると、船舶では伝統的に、推進力であるエンジンを発電機に直結しているケースが多い。この方式は自動車と同じで、エンジンを止めるとバッテリー頼みになる。航空機の場合はエンジンが翼にあるので、発電機は別に客席の下にある。

      

この点、列車と電車の発電機は、やや異なる。かつて長距離の特急列車は「電源車」という発電専用車両を連結し、客車に電気を送っていた。いまもディーゼル列車では、照明や換気の電気をどこから供給するかが大きな課題だ。

電車の場合、列車と違って電気は架線から供給される。とはいえ電車の中で電圧を変えたり、車内機器での電力需要が供給を上回らないようにコントロールする必要もある。そうした機器は、乗客からは見えない床下や、屋根の上に目立たないように置かれている。

乗り物の空調や換気も、住宅やオフィスより難しい。窓を開け、外気を取り込んで「気持ちがいいな」感じるのは、せいぜい時速30キロメートルまで。それ以上になると危険だし、空調も効かなくなる。何より騒音が酷い。騒音を抑えるには完全に締め切る方がいいが、そうすると車内は息苦しくなる。満員電車のようにすし詰め状態だとエアコンや換気の性能の問題も出てくる。

      

電機産業全体のセグメントには「乗り物用電気機器」という区分はない。しかし、その生産高は意外に大きい。搭載する場所と制約に応じて、機器メーカーはさまざまな技術力を傾けている。

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