セイコーと顧客の信頼の始まりは「関東大震災で溶けた時計を新品に無償交換します」だった!

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2階の「常に時代の一歩先を行く」展示フロア

珍しい時計、間近に観察

セイコーホールディングス(HD)が運営するセイコーミュージアム銀座は創業者である服部金太郎の生誕160周年を記念し、8月に東京都墨田区から創業の地に移転・開館した。開館1カ月で約2300人が事前予約で訪れた。地上5階、地下1階の館内6フロアには同社に関する資料や製品、国内外の貴重な時計など約500点を展示している。

2階の「服部金太郎ルーム」には服部時計店設立当時の資料や精工舎で開発した時計、製造設備などが並ぶ。製品の発売時期と時代背景を併せて見ると、近代化が進む日本で服部氏が見据えた“時代の一歩先”を理解できる。

階段近くにある黒い塊は修理で預かっていた懐中時計が1923年(大12)の関東大震災で溶けたものだ。新品への無償交換を呼びかけた当時の広告は「今につながる信頼の基礎を築いた出来事だった」(村上斉館長)。

4、5階には歴代のセイコーブランドが並ぶ。技術革新がテーマの4階は精度向上にちなみ、部屋の奥に向かって発売年が新しくなるほど床や壁のマス目が小さくなる。1番奥にあるのは69年(昭44)に発売した世界初のクオーツ腕時計「クオーツアストロン」だ。近くの壁に貼った大型ロッカーほどの大きさの放送局用水晶時計(59年納入)の画像と見比べると技術開発の速さが分かるだろう。

世界初のクオーツ腕時計「クオーツアストロン」

製品の愛用者や研修目的など来場者層は幅広く、最近では若い女性も多く訪れるという。地下にはスポーツ計時計測の体験型展示もあり、陸上競技の男子100メートルの世界記録を体感で当てるフォトフィニッシュを楽しめる。

珍しい時計を間近に観察できるのも同館の醍醐味(だいごみ)だ。国内外の貴重な時計が集まる3階の展示品は1点を除き全て本物。「ビッグ・ベン」の愛称で知られる英国会議事堂の大時計塔の振り子式時計のプロトタイプや、芝浦製作所の創業者・田中久重による和時計「須弥山儀(しゅみせんぎ)」などを展示している。

【メモ】▽開館時間=10時半―18時、1日3回の事前予約制▽休館日=月曜日、年末年始▽入館料=無料▽最寄り駅=東京メトロ銀座線、丸ノ内線、日比谷線「銀座駅」、JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」▽住所=東京都中央区銀座4の3の13セイコー並木通りビル▽電話番号=03・5159・1881

日刊工業新聞2020年11月27日

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