祝60周年!「グランドセイコー」のブランドカラーが紺色のワケ
セイコーウオッチ(東京都中央区、高橋修司社長、03・3564・2111)は、最高級腕時計「グランドセイコー」の誕生60周年を記念した特別モデル4機種を8日から順次発売する。文字板はブランドカラーの紺色「グランドセイコーブルー」で彩った。価格は44万―110万円(消費税込み)。いずれも数量限定で販売する。
「ヘリテージコレクション」は機械式(写真)とクオーツ式の2種類を用意。ロゴの色や文字板の模様がそれぞれ異なる。同コレクションのクオーツ式や「スポーツコレクション」の特別モデルは、時針単独の時差修正機能を追加した新たなクオーツムーブメント(駆動装置)を採用。インデックスやケースにダイヤモンドを配置した女性向け機械式ウオッチも発売する。
初代グランドセイコーは1960年に発売。日本の美意識や高精度なクラフトマンシップの象徴としてブランドカラーに紺色を採用した。グランドセイコーブルーを取り入れたデザインは周年記念をはじめ特別なモデルで展開している。
日刊工業新聞2020年2月7日
【“攻め”を体現したグランドセイコー(セイコーホールディングス・中村吉伸社長インタビュー)】
―2019年は海外情勢が不安定な1年でした。
「20年も依然として不透明感が強い。米中貿易摩擦は19年末に少し和らいだように見えるが、防衛問題も絡む根深い問題。一瞬緩んだとしてもそう簡単に解決しないだろう」
―日本経済の見通しはいかがですか。
「東京五輪・パラリンピックで拡大しそうだが、反動をどのようにカバーできるか下期が正念場になる。バラ色のイメージは抱けない。待ちの姿勢だと苦戦するだろう」
―19年度からの中期経営計画では“攻め”がキーワードです。
「特にブランドビジネスは攻めることが必要。腕時計の生産体制は中計の期間中に倍増できるくらいの能力がなければ世界規模で展開できない。広告やブティック、イベントへの投資と並行して取り組んでいる。加えて、アフターサービスへの投資も重視している。一つ失敗すると、口コミの影響が大きく、一気に広まる時代だ」
―「グランドセイコー」の海外展開は順調ですか。
「米国は店舗の出店や18年の販売会社設立が功を奏し、年々認知度が高まっている。中国も高級流通と手を組んで攻勢をかけており、(中国アリババが展開する)『独身の日』の売り上げも好調だった。(中国経済は)読みが難しいものの、需要があるのは事実」―ウオッチ以外の各事業について見通しを教えてください。
「電子デバイス事業は、中国経済の動きが心配ではあるが半導体がそろそろ底を打つだろう。車向けの精密部品については半導体よりも回復に時間がかかりそうだ。システムソリューション事業は増収増益が続いている。今は時刻認証の注目度が高く、キャッシュレス決済拡大の波にも乗れている。今の勢いなら中計最終年度の目標を達成できるだろう」
―スマートウオッチの拡大についてどのように考えますか。
「高価格帯製品とは別軸にあり消費者が求めるものも違うが、今後どのように進化するか興味と脅威を感じる。若い人が腕時計をするきっかけでもあり、(価格やブランドなど)次の段階に移る期待感も持っている」
【記者の目/社会変化を追い風に攻め】ノーネクタイやキャッシュレス化といった社会変化の中で、特に男性にとっては腕が個性を発信する重要なパーツになる。苦戦する普及価格帯と比べて、高価格帯は今後も伸長が期待できそうだ。期待のシステムソリューション事業もデジタル変革(DX)の追い風が吹く。時流に合った攻めの姿勢で思い描いた成長路線を歩んでいる。(国広伽奈子)
日刊工業新聞2020年1月15日