フォードからGMに変わったのは「フォードシステム」が原因。モデルチェンジに対応できず
1927年は米国のフォード・モデルT(T型フォード)が生産停止に追い込まれた年である。かわって同国の自動車業界のトップに立ったのがGM(ゼネラル・モーターズ)だった。
フォード衰退の一因は、他ならぬフォード・システムにあったと言われる。この画期的な大量生産方式によって低価格化を実現したモデルTは、最終的に1500万台以上が生産された。それが結果的に市場を飽和させることになった。
フォード・システムの柱は部品などの標準化に加え、ベルト・コンベヤーを使った移動組み立てラインである。1909年以降、フォードは生産する車種を黒のモデルTに限定した。それによって生産コストが削減され低価格化が可能になったわけだが、その間、約20年間にわたって基本的なモデルチェンジはされなかったという。
自動車が珍しかった時代にはそれでもよかったかもしれないが、大衆車として普及すると、同じ車ばかりではさすがに飽きられる。そこに目をつけたのがGMだった。デザインと広告を重視したGMは、車をファッションとして売り出すという戦略に出る。そしてボディー・デザインなどを年ごとにモデル・チェンジして、車を服飾と同じようなモード商品とすることに成功する。一方、モデルTのために最適化されたフォードの生産設備は、迅速なモデルチェンジに対応できなかった。
そのGMも2009年に経営破綻する。これは何を意味しているのだろう? 大量消費時代の終焉(しゅうえん)だと思う。一つの商品を大量に作り、同じものを多くの人が消費する、という時代は終わりつつある。
考えてもみよう。高齢者に時速100キロメートル以上のスピードが出る車は必要だろうか? それよりもアクセルとブレーキを踏み間違えようのない車や、人を轢きそうになったら自動的に止まってくれる車が欲しいと思う高齢者は多いのではないか。ぼくの87歳になる母は、妹に勧められてスマートフォンに替えたが、使いにくいと言って携帯電話に戻した。
人々の欲望は進化している。これからは一人ひとりが自分の欲しいものをデザインし、メーカーはそれをカスタマイズして個人に提供する、というのが新しい消費のあり方になるだろう。