トヨタ紡織が“女性目線”で製造現場の残業を減らせた理由

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主婦のアイデアを生かして重労働の袋畳作業を容易にした

トヨタ紡織 男女混合チーム

トヨタ紡織は自動車用内装品やフィルターおよびパワートレーン機器部品などを手がける。フィルターなどを扱う刈谷工場(愛知県刈谷市)は女性やシニアの在籍比率が年々高まっており、多様な人材が活躍できる生産ライン構築や職場改善が課題だった。そこで立ち上がったのが、2010年に誕生した同工場初の女性班長だ。16年に改善活動を開始。働き方などで男女間に壁があった職場は今や一体となって改善する風土ができ、残業短縮や生産性向上などを実現した。

刈谷工場は精密プレスから射出成形、溶接、樹脂溶着、組み立てなど幅広い技術要素を持つ。軽量品の扱いも多く、駅から近いため、女性従業員の比率は20%と、他工場に比べて高い。榊原正己工場長は「立地条件を活かし、女性やシニアも活躍できる職場にしたい」と思いを語る。

刈谷工場製造部エレメント・コイル製品製造課角PP2係の堀みほさんは10年に、女性で同社初の班長に就いた後、産休・育休を経て職場復帰。16年に17人を抱える班長となり、19年に職長となった。

班長として男性並みの作業をしてきた堀さんは、ある時、女性従業員の「できない」という言い訳に叱責(しっせき)した。その時「結局男性の味方じゃん。私たちだってちゃんとやってる」と返され、男性も女性も一体となって働けなければ良い職場にはならない―と痛感。一念発起して職場のYKI(やりづらい、気を遣う、イライラする)作業を探して改善を始めた。

職場のYKI解消

職場把握のため「困りごとボード」も掲示した。しかし1週間たってもボードは白いまま。「人目が気になり記入できないのでは」と考え、トイレの横に目安箱を設置したところ、ポツポツと意見が集まりだした。そこに書かれていたのはかつて自分が「言い訳だ」と決めつけていた内容ばかり。どれも重要な職場の問題点だった。

目指したのは「誰でも楽ちん」になる改善だ。材料を梱包(こんぽう)する袋は約2メートル四方もあり、床に置いて畳んでいた。そこで男女混合の改善チームをつくり、袋をセットしてレバーを引くだけで畳める装置を開発。残業を約2時間、短縮した。

次に着目したのが、女性には難しい重筋作業の金型交換だ。生産ラインでは1人当たり1台の機械を担当し、生産から型の交換作業(型替え)までを受け持つ。1直1ライン当たりで型替えは8−10回発生する。男性しかできないため、女性が担当するラインでは型替えの待ち時間が生じていた。しかも男性従業員は2−3ラインを掛け持ちするため、作業遅れが発生していた。

「女性従業員は増えていく。これを機に問題解決すべきだ」と主張する堀さんに「仕事を残して帰るのは気を遣う」と悩んでいた子どもを持つ女性従業員が賛同。2人で型替えの練習を始めた。

練習と合わせて、エルゴ作業分析で最も効率が低かった型を移動させる台車を改良。台車のローラー径を約60%太くするとともにローラーのピッチを25%狭め、両サイドに鉄製軸受を設置した。ローラー1本当たりの荷重を従来の2倍以上にあたる370キログラムに増やし、女性でもスムーズに型を移せるようにした。これにより1ライン当たり1−1・5時間の残業を低減。男性従業員の負担も軽減できた。

困りごとを洗い出し改善

それ以降、風向きは変わった。刈谷工場製造部エレメント・コイル製品製造課の大渕忠司課長は「男女問わず重労働を洗い出して改善する、という活動が定着した」と振り返る。

改善の目はシニアにも広がった。堀さんに続く女性第2号の班長である金沢依子さんの指揮の下、フィルター製品の箱詰め工程では、身長に応じてラインの高さを調節できるようにしたり、小さな数字を見ながら品番照合していた工程をバーコード照合に置き換えたりし、工程の80%程度を女性やシニアに対応した。1ライン当たり40分程度、作業時間も短縮した。

次のテーマは、障がい者人材の活躍だ。刈谷工場製造部の黒井宣男部長は「今年から、歩行困難者や聴覚障がい者が働きやすい職場改善に始めた」という。電動車向け部品などが増える中で「女性やシニアも含め従業員スキルを明確にして、不足している部分は育成していく」(黒井部長)。従業員の特性に合わせた工程づくりによって生産性を高め、工場全体を強くしていく。〈工場管理11月号〉

日刊工業新聞2020年11月23日

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