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「消費者は加工食品まで回遊しない…」買い物変容でキユーピーが打った一手

長南収社長インタビュー
「消費者は加工食品まで回遊しない…」買い物変容でキユーピーが打った一手

キユーピー公式サイトより

店頭顧客との接点拡大

キユーピーは新型コロナウイルス感染拡大による外食の減少などを受け、業務用を中心に売り上げが落ち込んでいる。2019年12―20年8月期の当期利益は前年同期比25・6%減の109億円と大幅減益だった。経営環境の変化にどう対応するのか。長南収社長に今後の事業展開の方向性を聞いた。

―減益の要因をどう分析していますか。

「新型コロナ感染拡大によって内食、外食、中食の比率が変わった。事業環境が大きく変わり、我々の事業構造の脆弱(ぜいじゃく)さが見えてきた。外食は多少戻りつつあるが、以前の水準に戻ることはないということを前提に、事業体制の修正を図る」

―どのように修正しますか。

「調査によると、消費者の買い物行動が変化している。買い物時間を短くするため、生鮮売り場の周りだけで、手早く買い物を済ませて、加工食品まで回遊しない。我々は生鮮売り場でメニューを考えているのではと分析して、調味料やパッケージ総菜、タマゴ商品を青果、精肉、鮮魚、総菜売り場で展開する『フレッシュストック』を開発し、テスト展開を始めた」

―フレッシュストック事業を展開するための戦略は。

「調味料、総菜、生鮮と事業会社が異なっていたり、それぞれに営業担当を置いているため、組織の壁がある。ブランドを変え、壁を壊して、会社全体で客視点に近づく必要がある。まず、フレッシュストックを売るための組織を作り、来春、首都圏から本格的に売り場を取っていく」

―利益構造をどのように変えますか。

「家庭用の商品の方がブランド力があり、利益率が高い。一方で、業務用はシェフに依頼されて作った商品など技術力がある。業務用でやってきたメニューを家庭用に広げることで、利益率を上げ、リカバリーしたい」

―投資計画に変更はありますか。

「今年は3カ年の中期経営計画の2年目で、19年には生販物一体型の拠点『関西キユーポート』を建設するなど、積極的に投資してきた。ただ、現状を踏まえ、しばらく投資計画は凍結し、必要最低限にしていく。これまでの延長ではなく、コストコントロールしながら、まずは利益を出せる体制にする」

長南収社長
【記者の目/スピード感もち事業改革】

インタビューの中で長南社長は「スピード感」という言葉を何度も口にし、危機感をにじませていた。組織の壁を壊すような改革も、新型コロナ感染拡大で、めまぐるしく社会が変化する中では、待ったなし。スピード感をもって、事業改革に取り組み、早期の業績回復を目指す。(高屋優理)

日刊工業新聞2020年11月23日

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