高炉一時休止が相次ぐ鉄鋼業界、コロナ沈静後も「VS 中国」が待っている
新型コロナウイルスの感染拡大で、鉄鋼業界を取り巻く環境が一段と厳しさを増した。日本製鉄、JFEスチールは世界規模の需要減退を受け、減産のための高炉一時休止に相次いで踏み切った。政府は引き続き8都道府県を緊急事態宣言の対象として感染拡大防止に全力を挙げるが、世界的流行の収束は見通しにくい。2020年3月期の連結決算で巨額の当期赤字を計上した各社は当面、需要低迷に悩まされそうだ。
日本製鉄は東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)、同君津地区(千葉県君津市)、関西製鉄所和歌山地区(和歌山市)に加え、室蘭製鉄所(北海道室蘭市)と九州製鉄所八幡地区小倉(北九州市小倉北区)の高炉計5基の一時休止を決めた。
これらの大半は再稼働が前提。室蘭は8月開始予定の改修工事を7月上旬にも前倒しする。八幡は製造設備集約の一環で9月末に停止予定だったが、7月以降の休止でそのまま操業を終えそうだ。
同社は、19年8月の瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の火災事故の影響を踏まえ、同地区の高炉1基を2月から一時休止。これを含む6基の減産規模は、粗鋼ベースで約3割に上る。
JFEスチールは西日本製鉄所の倉敷地区(岡山県倉敷市)と福山地区(広島県福山市)の高炉計2基を一時休止し、生産能力で3割以上の減産となる。
神戸製鋼所も需要減退を受けて加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の高炉の稼働率を下げるとともに、従業員の一時帰休に踏み切る方針だ。
生産設備縮小、追加も
コロナの影響で自動車産業や建設業などの鋼材需要は急激に落ち込んだ。日本の自動車8社が3月に国内外で生産した乗用車台数は前年同月を26・1%下回った。輸出台数も前年同月比12・2%減。
経済産業省は4―6月期の国内粗鋼生産量が1936万トンと、前年同期を25・9%下回り、四半期ベースでは09年4―6月期以来11年ぶりに、2000万トンの大台を割ると見通す。日本鉄鋼連盟の北野嘉久会長(JFEスチール社長)は「これまでにない大変厳しい状況だ」と指摘する。
北米や欧州では経済活動が一部再開し、日系自動車工場も徐々に動き始めた。だが、コロナ対策の専門家は感染が下火になっても「しばらくは(感染増の)小さい山が何度か繰り返しやってくる」と予想。世界経済は大きな下振れリスクを抱えたまま推移しそうだ。
沈静化後も中国の鉄鋼業という脅威に直面する見通し。中国政府の景気浮揚策で同国鉄鋼の過剰投資・過剰生産に拍車がかかり、アジアの鋼材市況が下押しされる懸念がある。日本の各社は、高炉を含む生産設備のさらなる縮小を迫られることにもなりかねない。