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創業110年の紙専門商社、消耗品自動発注の「スマートマット」で新市場に切り込む

創業110年の紙専門商社、消耗品自動発注の「スマートマット」で新市場に切り込む

スマートマット上にある在庫の重量を計測して自動発注する

10万点を供給

外食産業や小売り、セントラルキッチンなど向けに包装資材やストロー、トレー、洗剤といったアイテム約10万点を供給するオザックス(東京都千代田区、尾崎豊弘社長)。クラウド型ウェブ受発注サービスと関連デバイスの提供で事業構造を変革している。富山友貴常務執行役員は「主戦場でなかった分野まで市場が広がり始めた」と、サービス普及の手応えを語る。

新市場となったのは医療現場や工場。切り込むきっかけは消耗品などのストック重量を計測、ウェブ受発注システムと連動して自動発注するスマートマットの投入だった。設定した重量の閾値を下回ると所定数を自動発注。担当者はスマートフォンなどの画面で最終確認ボタンを押すのみで作業時間は1秒。棚卸しを無人化し、購買業務を省力化する。

医療現場では薬品などの在庫管理と危機管理の強化で採用。頻繁に使用量を確認していた看護師の業務負担軽減に役立っている。

一方、工場で意外なニーズが見つかったのが油や薬液が入った一斗缶だ。金属製の一斗缶は中が見えず、注ぎ口から目視によって目分量で確認していたのが、スマートマットに載せておけば正確に重量管理できるため、余剰在庫を持つ必要もなくなる。また、銀行店舗のバックヤードでのコピー用紙や粗品の管理・発注など用途は多様だ。富山常務執行役員は「いまはまったく販売先の業種にこだわっていない」と話す。

VB9社と協業

スマートマットの上に載せる製品は多種多様

同社は1910年に紙専門商社で創業、9月に110周年を迎えた。物流や自動倉庫を含む総合資材卸で顧客に支持されている。

自社構築のクラウド型ウェブ受発注サービスを始めたのは08年。しかし同じ既存サービスと差別化するため、ベンチャーとの協業で関連デバイスを開発・提供し、同サービスと組み合わせて提案するウェブ+αの戦略に変更した。

同社はベンチャー9社と協業し、20デバイスを提供する。倉庫上部の日本共通商品コード(JANコード)を読み取るため十数メートル先にも対応したデバイスや指に取り付ける小型コードスキャン、高速バーコード読み取りデバイスなどで顧客の業務を省力化している。

現在、同サービスは約1万2000拠点で採用されている。この広がりにはデバイス戦略も寄与したが、商品発注先を自社に限定しなかった点も大きい。メーカーへの直接発注や、他の商社への発注も可能なオープン仕様だ。「やりたいのはITプラットフォーマー。結果として、自社の物販につながらなくてもかまわない」(富山常務執行役員)と、同サービスをあくまでも別の柱として捉える。

働く人を楽に

新型コロナウイルス感染症の影響で雇用情勢が変化し、以前ほど人手不足に逼迫(ひっぱく)感はない。しかし少人数でビジネスを支える省力化ニーズは高まっている。同社は「今後も働く人を楽にしたい」(同)と考える。在庫管理や棚卸しがない産業はなく、市場開拓の余地は広がっている。(大阪・坂田弓子)

日刊工業新聞2020年11月20日

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