「TOBはスタートライン」NTT澤田社長が見据えるのは?

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NTTの澤田純社長

NTTは17日、NTTドコモの完全子会社化に向けたTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。年内にも完全子会社化が完了する見通し。完了後の焦点の一つが、中長期的な視点での研究開発力強化につながるかだ。NTTは次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」を掲げ、都市管理や医療といった分野への応用を追求してきた。こうした活動を加速し、革新的なサービスを創出できるかが問われる。(斎藤弘和)

「TOBは無事成功した。ドコモを強くすることで、将来、日本や世界がより豊かになるための営みを推進する」―。NTTの澤田純社長は17日のR&D(研究開発)関連イベントで講演し、こう述べた。TOB成立に伴い、NTTのドコモ株の所有割合は66・21%から91・46%に上がる。今後はTOBに応じなかった株主からも株式を買い取り、年内にもドコモを完全子会社化する見込みだ。

しかし、これは一つの節目にすぎない。今後、IOWNの加速が思うように進まなければ、ドコモ完全子会社化の意義も薄れてしまう。澤田NTT社長は「NTTグループ全体のリソース(資源)集中を図りながら、DX(デジタル変革)をどう推進していくか。この中のスタートラインがドコモのTOBだ」と気を引き締める。

ただNTTは従来も先端技術の開発に力を注いできており、同日のR&Dイベントでもその一端が垣間見えた。例えば医療分野では、IOWNの構成要素の一つと位置付けるデジタルツインコンピューティングによって、人の体や心理の精緻な写像を実現する「バイオデジタルツイン」を目指す。

このビジョンを基に開発を進めている仕組みが“テレ聴診”だ。音響センサーを備えた検査着によって、ヒトの体から生じる心音や呼吸音などを収集し、ネットワークを通じて遠隔伝送する。これにより、医療者が患者と対面しなくても聴診が可能になると期待される。NTTはこうした手法で得る健康関連のデータをバイオデジタルツインに蓄積し、心身の状態の未来予測にもつなげたい考えだ。

「テレ聴診」で患者は音響センサーを備えた検査着を着用

澤田NTT社長はIOWNの方向性について、「リモートワールド(分散型社会)に適したようなサービスを出したい」と語る。ドコモは、NTTグループの中では生活者との接点を多く持つことが強み。ドコモの研究開発やマーケティングの知見を生かし、潜在的な需要に対応するサービスをどれだけ生み出せるかが試される。

医療者は端末で聴診したい箇所を指定する

日刊工業新聞2020年11月18日

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