車載黒字化で新社長の座を射止めたパナソニック・楠見氏、「中国」事業はどうなる?

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中国では家電と住宅設備を一体的に提案する「パナソニックセンター杭州」を昨年開設

2018年夏、長野県軽井沢町で開催された日本生産性本部の夏季セミナー。普段は財界活動から距離を置くパナソニックの津賀一宏社長が登壇した。創業100周年の節目でもあり、講演は話題を呼んだ。少し柔らかい言葉を使いながら経営改革の変遷を一通り説明した後、次の100年に向けて「中国」「車載」を成長のキーワードとしてとりわけ強調した。

「著しい進化をとげる中国にできる限り身を置いて挑戦していく」。こう中国事業への意欲を語り、米テスラのイーロン・マスクCEOを「リアルチャレンジャー。ついて行けるのか、自分でも自信をなくすことがあるくらい。成長のスピード感、事業展開の幅の広がりは常人ではない」と論じてみせた。

このアニバーサリーイヤーを境に次期社長レースが本格化する。当時、有力候補の下馬評は二次電池事業を預かっていた楠見雄規氏、屋台骨である家電事業トップの本間哲朗氏、住宅設備事業の傘下で稼ぎ頭の配線器具などを担当していた品田正弘氏の3人。

19年春にはそれぞれ、楠見氏が車載、本間氏が中国、品田氏が家電のトップに就く。現在の中国事業の主力が家電と住宅設備であることを考えると、社長候補3人に対して重要な役割が与えられたことが分かる。

結果として車載事業を黒字に導いた楠見常務執行役員が社長の座を射止めた。ただ、中国事業の重要性は持ち株会社「パナソニックホールディングス(HD)」になっても変わらない。

津賀社長は16―17年にかけて何度も中国へ足を運び「中国政府や現地企業、パートナーは親近感を持ってくれている。できるだけインサイダーになりたい」との手応えをつかみ、19年4月に「中国・北東アジア社」を設立。中国で家電と住宅設備を一体展開する戦略を打ち出した。

日本国内ではいまだに残る旧松下電工との組織風土の違いから家電と住宅設備の連携が進みにくい。中国という巨大な実験場で新たな可能性を探るとの意図もあった。「日本は失敗に不寛容。新しいモノを提案する時の足かせになっている」(本間専務執行役員)。

新型コロナウイルス感染拡大で見直しを迫られているが、19年末時点では中国事業の売上高を21年度に9400億円規模(18年度比4割増)へ高める目標を示していた。

HD傘下で「パナソニック」の社名を引き継ぐ中核的事業会社には、中国事業、白物家電、電気設備などが集約され、家電事業からは音響・映像(AV)関連事業が新たに独立する。これらのトップを誰が務めるのか。楠見体制を支える顔ぶれが注目される。

日刊工業新聞2020年11月17日

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